2015年9月6日日曜日

Confirmation (Edinburgh Fringe Festival 2015)

29/08/2015 11:50 @The Dissection Room, Summerhall

エディンバラ到着後一発目の芝居は、Chris Thorpe作・自演の独り語り、時として観客参加型。

Confirmationっていうのは、(これは後で調べたことなんだけど)日本語では「確証バイアス」と呼ばれていて、
「人間ってのは、自分が既に持っている信念をサポートしてくれるような材料を集めて「客観」を名乗ろうとする」ということらしいんだけど。

とある街の郊外で行われた在郷軍人会の話から始まって、街の排外主義者のこと、米国の著名な排外右翼学者との会話等々。語り手であるChrisは自らを「英国に住む白人でリベラル左翼」であると名乗り、その視点から語られる人々は(自称へたれ左翼の一観客からすると)排外主義の白人どもの話で、おそらくこの手の芝居を観に来てるということは、会場にいるおよそ100人の人々は(9割以上が白人だったけれども)、ほとんどが「リベラルな思想の持ち主」なんだろうなとも推測される。
が、ここで困ったことに、
(1) この芝居の中で語られる対象としての排外主義者達の主張は、大体において、Confirmationの典型例のように思われる・・・(困ったもんだよなー)一方で、実は、
(2) この客席の中でも確実にConfirmationが作用していて、さらに、
(3) 語り手のChrisは、そのバイアスに自覚的でありながら、実はその罠の中にいるのか外にいるのか、語りの中では絶対に明らかにはならない
ということなのだ。

しかも、語られるトピックは、特に日本人である僕にとっては、「白人の排外主義者」のフレームで語られているにも拘わらず、
もちろん、現代日本の排外主義者と彼らが依って立つconfirmationの問題とパラレルで
(高等教育を受けていてそれなりの教養を身につけている人が、強固に理論武装されたconfirmationに陥っている状況に眉をひそめざるを得ない現状では特にそうで)、
冷静に聞いてられない、ということは、自らも実際のところはconfirmationの陥穽にはまっているんじゃないだろうか、
と困りだしたところで、ぎゅぎゅっと結末をたたんで60分のパフォーマンスが終わる。

本当に、困ってしまう芝居を観てしまった。もちろん、良い意味で。
柔らかな語り口で観客を取り込みながら、そして、取り逃がさないように手練手管を尽くしながら、ラスト、きちんと困らせてくる。
そこら辺の使い分け。語り手、語られる人の描写、語り手を演じる俳優、観客(しかも、総体としての観客と、1対1で対峙する観客との使い分け!)、その辺りの整理がきちんとついていて、しかも、あからさまになりすぎないようにコントロールしているところに巧みさ、凄みを感じた。

こういう芝居を日本で演るのは難しいだろうな、とも思った。主義主張の左右に拘わらず、confirmationの存在を指摘されると逆ギレする人に満ちてそうな気がするから。
その点、イギリス人は(少なくとも芝居を観に来る層の人は)偽善者ではあるかもしれないが、少なくともconfirmationの存在を一旦受け止める度量くらいは持ち合わせているだろう。ん?だから日本でやってみたいと思うのか。そうだね。やってみたいよね。で、沢山の人に観てもらいたいよね。

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