2015年9月21日月曜日

Absent

13/09/2015 13:15 @Shoreditch Town Hall

厳密には「演劇」というより「インスタレーション」かもしれない。Shoreditch Town Hallの地上階と地下のフロアを贅沢に使い、改装中のホテルに見立てた中を観客が巡る趣向の、(そう、日本で言えば「お化け屋敷」みたいな)パフォーマンス。
非常に面白かった。
Shiningで始まり、Badly Drawn Boyの"Spitting in the Wind"のPVを思わせる展開とノスタルジア、そして飴屋法水さんの「わたしのすがた」を思い出させる「痕跡」の取り扱い。

舞台は改装中のホテル、物語は、1950年代から2015年までこのホテルに滞在していたが、ホテル代が払えなくなって追い出された「元・社交会の大物」Margaret de Beaumont。まぁ、ここまで言ってしまうと、大体は、「何が言いたいのかなー」というのが分かってしまいそうなものだし、実際、そこから大きくはみ出るプロットはないのだけれど。

が、実際に一人で入ってみると、これが、怖い。
改装中の実在の古い建物の地下と、液晶ディスプレイと、鏡との組み合わせ。
まず、「過去の記憶」の映像を見つけてそこをのぞき込むと、そこはもうShiningの世界で、「もしここでおいでおいでされたら無茶苦茶怖い、逃げ出してしまう」ぐらいの迫力はある。
一人でいるのは怖いから誰かといたい。が、パートナー以外の人と行ってはいけない。何故なら、そこにいる人と手を繋ぎたくなってしまうからである。そうしないと、合わせ鏡から人が飛び出してきたらどうしようとか、クローゼットから何か出てきたらどうしようとか、扉の向こうには・・・、とか考えてしまうのである。

が、おずおずと引き返して「やっぱり見ません」というのは格好悪いので、先に進む。

先に進むにつれて、物語の構造が細かく見えてくる。それは、「過去の記憶」を再生することによって積み上げられていく。物語自体の語りは、極力抑えてあるのだけれど、まぁ、英国人を相手にせにゃならんので、ある程度説明的にはならざるを得ないかなーという感じ。
ただし、大きなどんでん返しはないにせよ、「観客に任せてある」部分が結構大きく取ってあって、それは嬉しい。

この話のモデルとなった実在の人物、The Duchess of Argyllについて知る人であれば、そのモデルについての記憶を思い起こしつつ、自分なりの物語を組み立てれば良いだろう。僕のように、モデルについて全く知らなければ、「ホテル暮らしのSocialite」という概念もいまいちピンとこない人間は、Badly Drawn BoyのPVに出てくるJoan Collinsを思い起こしながら、(実は、そのPVを最初にオランダのホテルで見たときの家族旅行のことを思い出しながら)このインスタレーションを巡ることになる。
そして、記憶の呼び覚まされ方は、人によって様々だろうし、人によっては全くピンとこないこともあるだろう。
それで良い。それくらい放ったらかしにされている方が、僕には心地よい。

トータル40分ぐらいで回り終えてしまったのだけれど、実のところ、前半、怖くて早足で進んでしまったので、もう少し長居できたのではないかと、ちょっと後悔している。
もう一回行きたい。が、一人では行きたくない。が、パートナー以外の人と行ってはいけない。むむむ。

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