2015年4月19日日曜日

The Curious Incident

18/04/2015 マチネ

UKに来て最初の週末。
住居探しをするはずだった土曜日が思いがけず空いてしまったので、当日券で芝居を観た。
Fringe Addictを名乗りながらいきなりWest Endで芝居というのもこっぱずかしいのだが、まぁ、初球はしょうがない。

The Curious Incidentは、Mark Haddonが2003年か2004年に出したベストセラー小説"The Curious Incident of the Dog in the Night-time"の翻案で、「夜中に犬に起こった奇妙な事件」という邦訳も出ている。
本当は2013年末にロンドンに来たときに家族で観るはずだったのだが、その直前に劇場の天井が落ちて公演中止になったという(うちの家族にとっては)曰く付きの芝居。

良いプロダクションだった。プロセニアム劇場の中でできる限りの工夫を凝らし、小説ならではのフレームと芝居ならではのフレームの違いについて自覚的に、想像力の広げ方についても、テクノロジーと上手な舞台装置の使い方でおっと思わせてくれた。

ただ、UKでこういう良い芝居を観ると、芝居の作り方というか、楽しみ方というか、そういうところの考え方が、日本(の小劇場)とずいぶん違うなー、というのが先に立って、思いっきり楽しめないところもあるんだよなー。
両脇に座ってるのは家族連れ。左隣はおばあちゃんと孫の男の子。右隣は4人家族、父親はギリギリまでBlackberryいじってるし、子供はゲームしてる。今の劇場がそういう場であることは疑いようもなくて、だから、上演中携帯が鳴ったり、親子でお喋りしてたり、そういうのもある程度しょうがないところもあって、そこで青筋立てて怒ってもしょうがないし、でも、大事なのは、上演中にその場を支配するフレームが、そういう、家族のお喋りや携帯の音では壊れてしまわないこと、そこが面白い。もちろん、その方が良いと思うわけでもなくて、実は、その分相当緩くフレームが作ってあるのは、ちょっと不満だったりする。

フレームの締め方までぎゅぎゅっと創ってある芝居ももちろん観たことはあって、Compliciteとかそうだったなー、とか、パン屋再襲撃のUK公演もそれなりに受け入れられてたなー、とか、は朧気に覚えているのだが。
そこら辺の間口の取り方とか、入り込みかとか、もうちょっと芝居観て、考えていきたいとは思う。アンテナの張り方はまだまだ足りないが、アンテナを張れば張るほど、受け手と作り手の関係の違い、根底のところの違いが浮き彫りになりそうで、却って面倒くさいだけの気もしたりする。
でも、大体、一人でウェストエンドに芝居観に来る人って、そんなにいない気もするんだよね。トホホ。