2008年9月21日日曜日

テアトル・デュ・ムーランヌフ ジャックとその主人

20/09/2008 マチネ

観終わった後に最初に思ったのは、
「ジャックとその主人、は、舞台に載せたくなってしまうテクストなんだな」
ということだった。

先週東京デスロックの「ジャックとその主人」を観た後、急遽図書館で2006年新訳を借りてきて読んで今回の公演に備えたのだが、そもそも話があっち行ったりこっち行ったりするのが売りの小説ということはよーく分かった。だから、
「読んでいる時にどこが印象に残ったか=舞台に載せるとすれば、どこを切り取って、どんな風に載せたいか」
について、構成・演出担当の趣味が露骨に出てくる。その違いが面白かった。ミラン・クンデラも同じ小説を戯曲化しているそうなので、そのうち読んでみるかも。

多田演出では、「天上に書いてあること」の一点をまず決めて、そこから点と点で構成を繋げていたのに対し、ムーランヌフの構成は、まず全体の枠組 みを決めて、そこにざっくりと各エピソードをどう嵌め込んでいこうかと考えた、そういう、アプローチの違いがあったと思う。なので、出来上がったものもか なり違う。

前半が終わった時には、正直、デスロック版のほうが面白いのではないかとも思ったのだけれど、前後半通してみて、後付けではあってもアプローチの 違いを理解できた時点で、軍配上がらず。つい最近読んだテクストと公演字幕テクストの違いとか、どこを端折ってるとか、自分が強い印象を受けたテクストの 部分と演出の受け取り方が違うな、とか、いろんなことが「違っている」、というのがポジティブに面白かった。

こういう、ある程度質の高い公演は、もう少し大きな小屋で(例えば吉祥寺シアター)お客さんももっと入れてやっても良いのかな、とも思ったのだ が、彼らのエーグルの本拠地はアゴラよりもちょっと狭いくらいの小屋らしい。うーん。こういうのをそんな舞台が近い小屋で観られるとは、スイスの村も侮り がたい。

あ、そうそう。当日パンフの和訳、わたしがやってます。原作読まず、稽古も見ずに書いて果たしてどうよ、ということでとても不安だったのですが、 まぁ、英文を辿ってれば、結構当たらずといえども遠からず、なもんだなぁ、と。えっと、当パンの日本語訳に不満のある方、文責私ですので、あしからず。

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