2008年9月2日火曜日

柿喰う客 真説・多い日も安心

31/08/2008 マチネ

千穐楽。

<以下、ネタバレ>


AV女優の天下獲りと秦の始皇帝を引っ掛けて物語りに落としたフレームの巧みさはさすが中屋敷法仁、バブル絶頂期の「カノッサの屈辱」を思い出させ、「焚書坑女」には+40歳の特権、思わず笑う。

でも、何故柿喰う客の芝居が面白いかというと、そういう「仕掛け」「プロット」が気が利いているとかではない。むしろ、そのプロットに沿って、2時間を怒涛のごっこ遊びで埋め尽くしてしまうキャパシティと気迫の濃さが凄いわけである。

ごっこ遊びをなめてかかってはいけない。子供がごっこ遊びをしている時のリアルさに関するルール決めのシビアさには、誰しも思い当たるところがあ ると思う。そこには、演じていて面白いか面白くないか、というとっても厳しい基準しかなくて、子供たるもの面白くないごっこからはすーーーっと離れていっ てしまうこと必定である。そこには、妙な説教臭さとかテーマとか世界の広がりとかは無用、とにかく遊びつくせ。そういう態度をもって「妄想エンターテイメ ント」と呼ぶのであれば、これはもう、そこに一枚かむほかない。

なので、柿喰う客が人気劇団になっても、それは、「サービス精神旺盛だから」だとは、僕は言わない。僕が柿喰う客を気に入るのは、「ごっこに徹する姿勢が果てしなく愛らしいから」である。
だって、僕は、柿喰う客に出てくるAVネタギャグも、テレビネタギャグも、最後にカラオケで歌う曲も、なーんも知らんもんね。でも観てて楽しい。「焚書坑儒」も「戦国の七雄」も知らん人だって充分楽しんでたじゃないか。

これからも、中屋敷法仁があくまでも自分の面白いと思うごっこ世界を、これでもかとばかりに創って壊して創って壊す、その勢いを、どうぞ失いませ んように。観客としての僕も、いつまでもそういうごっこ遊びを「面白い芝居」として受け容れられますように。なんだか、そういうことを祈ってしまうのであ る。

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