2016年9月1日木曜日

Cuttin' It

26/07/2016 20:00 @The Yard

相当キツい芝居だった。FGMをテーマにしている時点でキツい芝居なのは分かっていたつもりだったけれど、その予想の幅を上回るキツさ。
ティーンエイジャーの女優二人が大いに好演、それがまた芝居のキツさを増すばかり。涙を誘う余地も無く、ぬるい正解を示してお茶を濁すこともなし。ドーンと来た。

テーマはFGM。小生も殆ど知識を持ち合わせていないし、日本にいて、あるいはUKにいても日常でそれについて話すことは、おそらく「ほぼ、絶対に」無いだろう。
それが、ソマリアをはじめとするサハラ周辺諸国では2000年来の「伝統」として行われていること。UKの移民コミュニティでも引き続き行われていること。
UKでは合法でないから、「ヤミ」でオペレーションが行われていること。そういうことは、芝居の中で最低限、説明される。

でも、これはFGMを知らない人のための啓蒙芝居ではない。
二人のティーンエイジャーが、FGMについて経験することを、飽くまでも二人の視線から上から目線へと遊離することなく、地に足をつけたまま、しっかり目を開いて直視している。
それは本当にしんどいことだ。観客にとってもしんどいし、創り手にとっても相当しんどかったのではないかと思う。

自分に課された仕打ち、それが妹にも課されるかも知れないということ。
一方で、それをコミュニティーにおける決まりだからと受け入れて、淡々とそれに加担すること。
自分に課された、「妹に課して欲しくない」行為に、友達が加担しているという現実。

それは、ソマリアからやって来た二人の少女の視点から離れないからこそ、普遍性をもって迫ってくる。
今までコミュニティーで行われてきたことだから、続けて良いのか?
それがおかしいと考えることは、「伝統を捨てること」だったり「西洋にかぶれた考え方」だったりするのか?
そこを乗り越えて、強力に議論を進める力を、僕らは持っているのか?

この芝居は、そこをオープンにして終わる。それもまた、観客に対してキツい。キツいけれども、押しつけがましさはない。
それほどまでに、舞台上の二人の少女は、色々なものを、きちんと背負って演技していた。
こういう芝居が上演出来るロンドンって、素晴らしい場所だな、って思ったんだ。

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