2008年11月17日月曜日

五反田団 すてるたび

16/11/2008 ソワレ

役者が舞台上で「ぜーはー」していると、「ははぁーん、余裕が無い、とか、絶望的、とかいう演技ね」と即思ってしまって、一気に冷めてしまうのだけれど、黒田大輔は「ぜーはー」が許されてしまう日本で唯一の役者なのではないかと思われるほどに、ぜーはーしても、ぐしゅぐしゅしても、嫌味が無いというか、面白いというか、見てて飽きない。

そもそも、ぜーはーしているのが、演技なのか、子供の遊び的ぜーはーごっこなのか、何なのか良く分かんないし、ぐしゅぐしゅしてても、泣いてる演技なのか笑ってるのか良くわかんないのかただの洟垂れなのか、全く分からない。

そういう懐の深さがあるので、冒頭の仕草(ネタバレになるので明かさない)が何だか分からないところから出発して、実は最後に辻褄を「合わせようと思えば合う」、(でも本当のところはわかんない)、ようになっているのが、予定調和でなく見られた。

そうやって、予定調和でないところへズレていきながら、実は一つの環に収まっている(ようにも思われる)ところへと観客を引っ張っていく手管にシビれた。こんなに片付いていてパンチの綺麗なアトリエヘリコプターは初めて見たのだけれど、そういうシンプルな舞台で4人でバッチリ魅せてくれる力にも感謝。

当パンに「劇作家として思春期に入っている」ということが書いてあったけれども、それは丁度、12年目の青年団「冒険王」初演の当パンに、平田オリザが「いよいよ書きたいことが尽きて、書きたいことなど何もない。でも書く。という状態になってきた」と書いていたのと、年齢的に奇妙に符合するように思われる。
(そしてその文章を、前日の「冒険王」のアフタートークで多田淳之介が読み上げたのもまた奇妙な符号ではある)

その後の平田の仕事ぶりを思い返すにつけ、今後の前田氏の歩みが大変楽しみな局面に入ってきている。と思う。

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