2008年5月25日日曜日

渡辺源四郎商店 ショウジさんの息子

24/05/2008 ソワレ

泣いてよし、泣かずともよし。畑澤芝居の内角高めの豪速球に見事してやられた。
後半に入ってからは客席のあちこちでぐしゅぐしゅと洟をすする音が。聞いている限り、「男」泣き比率高し。客席前方からはなんと大きな音で嗚咽が聞こえてくる(これも男性)。

実年齢79歳の現役俳優(デビューして6年)宮越さんのインパクトは前回の『小泊』から不変。最初の出からして「やられた!」と思わせる。が、今 回の堂々たる4番バッターはささきまことさんで、1時間30分、他の役者さんには申し訳ないが、ささきさんからどうにも目が離せなかった。ドーンとくる、 重量級の、劇場に根をしっかり張った演技に、緩みっぱなしのはずの涙腺も乾いた。

泣きポイントで泣けなかったというのは、
①実は、劇場の他所からハナぐしゅぐしゅがあんまり沢山聴こえてきて、正直、機先を制された感があったから、というのもあるが、
②泣きポイントで宮越さんや工藤さんに移入するべき(?)箇所で、実は、ささきさんから目が離せなくて、彼が何を考えているのか(役柄上&役者として)、どこに視線をやっているのか、そこにばかりこころを奪われていたから、というのも凄く大きい。

この芝居、畑澤氏いうところの「バレバレ伝説」であって、芝居前半で実は後半の展開はほぼバレバレである。でも、それを改めてばらすでもなくあか らさまに観客に隠すでもなく(勿論劇中人物は隠そうとしているんだが)、メロドラマに流れないように最後までこらえてみせる演出の手管と、それをしっかり 支えきってみせたささき氏、本当に素晴しい。

現代口語演劇は「物語」を一旦否定してみせようということから始まったともいえるのだけれど、最早、舞台上に物語があったところで、そこにもたれ かからずに存在してみせることのできる役者がいるのであれば、殊更に物語を否定せずとも充分成立するのだということが良く分かる。なべげん、おそるべし。

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