2008年5月6日火曜日

モダンスイマーズ 夜光ホテル

06/05/2008 マチネ

終演後、なかなか拍手鳴りやまず。それだけの手応えは役者にもあっただろうと思われる。
モダンスイマーズ拝見するのはまだこれで二度目だが、見応え十分の1時間25分だった(もちろん、不満な点・僕のテイストに合わない部分は多分にあるのだけれど)。
6月1日までほぼ1ヶ月の公演だが、評判がどんどん良くなる可能性大。


<この後は、話の展開に大いに関連するコメントが続きます。ネタバレにつき未見の方はご遠慮ください>

乱暴にまとめに入るなら、
「少年の頃の仲間達が大人になって、あぁあの頃に戻りたい、戻れない。汚れちまったこのオレの汚れは落ちやしない。」
みたいなハナシである。

この芝居を1時間25分で切り取ったのは大正解で、おそらくそれ以上やっていると長く感じられただろう。ちなみに渡辺源四郎商店の「背中から四十 分」も、同じく北の町のホテルの一室、窓は下手向き、入り口は上手側、という設定だったが、1時間くらいだったと思う。ホテルの一部屋の閉塞感は90分が 限度、ということか。

その90分を引っ張るのは、
① 萩原たちが引き受けた「仕事」とは何か?最後に訪ねてくるのは誰か? という興味と、
② なんだか萩原が隠していることがありそうで、そのカードをいつ切るのか? という興味。
そこに向かって観客をひきつけておきながら、
ペースメーカー=津村、異物=西條、イロモノ=古山、萩原と対置される「カタギ」の人間としての小椋、の4人がうまーく配置されて、芝居をドライブしていく。

拍手の9割がたは、この5人のアンサンブルに対してのものだと思う。津村のライトウェイトに見せながらテンポを変化させてペースを作る手管、萩原 の若干後ろノリの(悪く言うと変に思わせぶりで、台詞の頭に間が入るような)台詞、小椋のビブラートなし直球演技、シンバルを鳴らすタイミングを虎視眈々 と狙う古山、タイミングの関節を外すタイミングを狙う西條。それらのピースがぴたっと嵌って、そこには、"ほとんど"破れはなかったと思う。

疑問符がつくとすると、従って、作・演出の部分に対してであって、それは例えば、
① 萩原がカードを切るタイミング(ツッキーの息子カード & 刺青消去カード & クスリカード)が、あまりにも遅くないか?これでは、いわゆ る「あっと驚く意外性溢れるラストシーン」の紋切り型に落ちているといわれても仕方がない。もっと早くカードを切っておいて、その後の展開を見せた方が、 「エンターテイメント」としてはともかく、「舞台」としては見ごたえあったのではないか。(でも、萩原のキャラの設定ともからむので、難しいバランスかも しれないが)
② ラスト、音楽大音量で締めくくるのは如何か。音楽を鳴らさないと持たない演技ではなかったと思う。
③ あと、やっぱり、主題としてあまりにも紋切り型から入っている印象がどうしてもぬぐえない。妙なメッセージ性で締めくくろうとしてない分だ け、かろうじて踏みとどまっているんだけれど。これだけアンサンブルのきちんとした役者陣なら、「物語」と「主題」と「あっと驚く新展開」から逸脱したと ころで勝負かけても充分勝ち目があったと思うのだが、どうか。

という訳で、気に喰わないところも大いにありました、と胸を張って言えるくらいに、一生懸命観られる見応えたっぷりの芝居でした。

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