29/03/2007 ソワレ
とんでもないものを目の当たりにしたという感覚。
岡田利規演出、松井周+増田理出演の「カスカンド」。
岡田は当パンに書く:
言葉を延々と継ぐことが絶対に思念を展開させることに結びつかないようにすること
それを実演してみせる松井と増田。恐ろしい。モンク+コルトレーンの重量感。けして流れない。滑らない。
一つ一つの音の質感。意味は勿論、つく。言葉だから。でも、それは、聞き手である僕がつける意味であって、増田と松井は余計な意味を一切つけていない。
(横道にそれるが、その時点で、このパフォーマンスは、「翻訳であること」の限界を突き抜けている。変な話、こんな演技が出来るなら、翻訳の出来が悪くても、極端に言うと、出鱈目を言っても、舞台が成立してしまうだろう)
舞台上の全役者が、ここまで余計な意味をつけずに、言葉をひりだし続ける芝居は観たことがない。増田の声。息を吸い込む音。ツバをすする音。乱れないタイム。
動かない松井。
松井の声、増田の声、音楽、この3つが絡み合った瞬間、「ブン」と来た。これは、喰らった。
終演後のレセプションで、岡田氏は「このベケットは、カンタンンだった」と言い放った。そうだろうとも。そうに違いない。
そして、松井・増田両氏にとっても、このベケットを演るのは、難しいことではなかったに違いない。
そして、「カスカンド」なーんて、意味もわかんないタイトルの、スジも終えないようなラジオドラマは、きっと、この3人によって上演されるのを待っていたのに違いない。
でも、もちろん、この3人は「カスカンド」を待っていたわけではないのだ。おそろしい3人だ。
松井周が変態役者であることは万人の知るところだが、まさか増田君がこんな変態役者になっていたとは。それが、とても嬉しい。
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