03/03/2007マチネ
戦間期のマドリッド。ロルカとダリとブニュエルが暮らす学生寮をピカソとアインシュタインが訪問する。その5人の愛憎・嫉妬・友情。
と書くと、なんだか有名人の名前を借りたベタな芝居のように聞こえるけれども、そして、野木氏の前二作と同様、屁難しい言葉の出てくる会話がこれ でもかというように繰り出される、その緊迫感をいかに役者が殺さずに演技しすぎずにストイックに舞台に載せられるかが勝負、という予想が立つのだが、まさ にその予想を裏切らず。
相変わらずたいした手管である。
この劇団の台詞の織り上げ方は変わっていて、
・ 青年団風、転位風の、いいよどみ、会話の切断、平行等等、いわゆる「役者に演じさせないようにする」工夫はほとんどない。
・ 従って、台詞が滑るか滑らないかは、かなり役者に負荷をかけている。
・ 一方で、役者は、間をおかず、余計なニュアンスを入れずに台詞を発することも要求されている。あるいは、おそらく、間を取ったりした瞬間に芝居がクサくなることを、意識として共有している。あるいは、誰かが強烈に認識している。
・ それによって、字面だけで判断するとむっかしの翻訳劇みたいなとりかたをされそうな危険な戯曲を、緊張感のある世界として舞台に乗せることに成功している。
と、今のところの感想ですが、作・演出のネライと違っていたらごめんなさい。
今回の芝居は、5人中4人が芸術家。芸術家だけだとベタベタになってしまうところにアインシュタインを配することで、うまくリズムが作れていた。
引き続き、役者陣には力がある。男の三角関係も友情も、変な色気を出さずにまっすぐ好演。
ただし、僕の観た会はトチリ多かった。この、パラドックス定数の芝居だからこそ、すなわち、完璧に紡ぎ切った時空の中でそこはかとない裂け目を 「感じさせる(立ち現わす、ではない)」芝居だからこそ、トチリでその部分だけビリッと裂けてほつれてしまうのは余りにももったいない。難しいとは思いま すが、見ていて
「たのむよ。この世界を壊さんといてくれよ」
と思ってしまった。
まぁ、客の身分で「たのむよ」ってのは生意気だが。
小屋主の「Nf3 Nf6は何ちゃら戯曲賞をしのぐ出来」といっていたのは、100%当たっているとは思わないけれど、でも、モ○ヤ氏の戯曲なら100万倍はしのいでいるな。
次回以降も大変楽しみです。
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