2007年3月18日日曜日

龍昇企画 夢十夜 窓と鏡

17/03/2007 マチネ

何と、どうも、年寄りの芝居である。悪い意味では、勿論無い。
戯曲を書いた犬井氏からして、当パン冒頭、「人は死ぬ前に記憶のフィルムを巻き戻すという」である。龍さん、「90まで生きたい」である。

昨晩観たハイバイの「おねがい放課後」では、死が60年の彼方にある高校生達と死が4年後に控えている志賀ちゃんの時間の流れ方のギャップが舞台 に載っていた。志賀ちゃんは、自分が肉体的には過去を振り返る局面に達しているにも拘らず、高校生の自意識を持って未来に立ち向かわねばならない。
が、この「夢十夜」は、1年に1歳ずつ年をとってきた先生が0を過ぎて、死をすぐ目の前に控えていることに対して極めて自覚的になった上で、過去を振り返る様を舞台に載せている。

従って、夢十夜の先生は、志賀ちゃんのように足掻いたりしない。満たされない欲望があっても、突き止められるべき謎が突き止められなくても、フラストレーションや足掻きを感じる必要は無い。むしろそこには、微笑を浮かべた充足感のようなものが感じられる。

もちろん、満たされていないので、色々、夢を見る。時には行動を起こす。ただ、それは、なんだか、将来に向かったものではなくて、むしろ、「遣り 残したこと、突き止め得なかったもの」の帳尻あわせにすら感じられるものである。蓋し、日がな一日書斎にいて。ということだろう。

この、非常に年寄りな芝居に大きく魅かれる自分も、年をとったのだろう。

そう。そういえば、「年をとると夢も現も同じもの」ということで、この芝居の「夢」と「現」のスイッチのOn/Offは、年寄りならではの手練手管。うにょっと切り替わるその風情が素晴らしかった。

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