2009年11月29日日曜日

海をゆく者

28/11/2009 マチネ

出羽の守扱いを恐れずに声を高くして叫ぼう。「責任者出せ!」(フォント64pt)。

マクファーソンの名作戯曲から、マクファーソンらしさやアイルランドならではの要素を一切合財取り除いて、おこちゃま観客にも受け入れやすいようにアレンジして本格派気取りかよ!
そうさおいらは出羽の守、ロンドン初演「では」ロンドン初演「では」を連発して周囲に煙たがられるお邪魔ムシさ。でも、それでも言うよ。このプロダクションはマクファーソン戯曲の魅力を全く引き出していないと。

何だかなぁ。翻訳劇って、難しいんだけど。こういう、アイルランドの臭いがいいね、っていう芝居だとますます難しいとは思うんだけど。そこで、かなり客に媚びた安易な選択肢を採り続けた結果がこのプロダクションじゃないかという気がしている。

もしかすると、初演の兄役を演じたジム・ノートンが素晴しすぎたのかもしれない。ノートンと同じ方向性の演技では勝負できないと判断して造形を変えたのなら、それはそれで一つの選択肢だが、まぁ、結論を言えば、大きく失敗していた。

<以下、ネタバレも相当なレンジで含む罵詈雑言>

・ 兄の造形を5億光年間違っている。なぜか神様が弟に肩入れする理由の大きな一つは、「どうしようもない兄の」信仰である。そういうのが戯曲の中に散りばめられているのを本プロダクションは一切無視。これではアイルランドっぽさは失われてしまうし、何故、ラスト、弟ではなく兄の方に勝負手が与えられるのかが説明できない。
・ 兄の演技、あれじゃ、目が見えない人を演じているのに全然目が見えないように見えない萩本欽一だよ。いや、ビル・ベイリーか。あ、ファーザー・テッドのファーザー・ジャックだよ。あんなに元気なんじゃ、ラスト近く、悪魔が「じゃ、兄さんが肩代わりするってことでいいよ」という台詞の意味がゼロじゃないか。
・ ニッキーの衣装は、ありゃなんだい?経済が昇り龍の勢いのダブリンであぶく銭掴んで商売始めるヤツが、あんなネルシャツ着てたりしないよ。
・ ロックハートも仕立てが良すぎ。貧乏人⇒あぶく銭⇒金持ちのグラデーションが衣装で見えないので、ロックハートだけ浮いて見えてしまう。初演はもっと「後ろから尻尾がでてきそうな」田舎紳士風の格好だったんだけど。
・ 「酒を床にこぼす」とか「暴れる」とか、そういうのを客にみせて媚びるのは止めた方が良い。あれは、「普通にやること」であって、「客に説明するためのツール」になった瞬間安っぽく薄っぺらくなる。

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