2007年10月22日月曜日

ペンギンプルペイルパイルズ ゆらめき

21/10/2007 ソワレ

これがまた、面白かったのである。
この芝居、ワンフレーズで言い表せば、「愛と虚構のプレートテクトニクス」。

出だしから、「え、ここまでやるとちょっと過剰で、『こんな奴いねーよ』って誰もが思わないかい?」
と思うような要素を、これでもかと積み重ねていく。
その一つ一つのパーツは1cmくらい、リアルさからズレていて、強引なんだけれど強引過ぎず、でも、それが、間断なく積み上げられていく結果、「芝居として」の虚構がエラい方向に膨らんでいく。
例えば、玉置孝匡の怒鳴り過ぎ。リアルよりも5cmくらい怒鳴りすぎ。
ぼくもとさきこのしつこさ。リアルよりも約10cmしつこすぎ。
「これくらいまでなら勘弁できるでしょ?」と言っているようでいながら、実は、そのペースに観客を嵌めているのである。

その、虚構のプレートテクトニクスと平行して、夫婦の間、登場人物の間の感情のズレもちょっとずつ積み重なっていく。太平洋プレートがユーラシア プレートに向かって少しずつ沈み込むように愛と虚構のズレがエネルギーを蓄えて、居心地の悪さが耐えられない水準に達した時に、揺れ戻しが生じる。そして 余震。

このプロセスが、なんとも上手に描かれていて、目が離せなかった。芝居を虚構として組み立てるプロセスと、登場人物が虚構を組み立てるプロセスがシンクロで進行し、最後にガラガラっとひっくり返してみせる手管に目を瞠った。

前回トラムで観た「ワンマン・ショー」は、芝居の「構造」ばかりが浮き立っていまひとつの印象だったけれど、今回の芝居はよい。「リアルからのずれ方」がこれくらいの幅に抑えて積み上がっていく方が、僕としては見ていて気持ちよい。

でも、芝居前半は、実は、
「戸田昌宏はなんてトム・ヨークに似ているんだ」
ということしか考えていなかった気もする。似ている。似てるよね?特に、古着屋の店主なんていう格好で出てきて、あーいう無精ひげを生やしていると。
Radioheadの新譜、In Rainbows、なかなかいいっすよ。

あれ?話がずれたが、えー、気持ちよく最後まで観ました。こういう、現代口語演劇から5cmくらい距離を置いて、でも、きちんとしていて、という芝居も良いな、と思った次第です。

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