2010年5月22日土曜日

木ノ下歌舞伎 勧進帳

14/05/2010 ソワレ

演劇ってこんなにポジティブに楽しいんだぜ、っていう気合と自信と快感に満ちた公演。

歌舞伎の定番「勧進帳」を現代の身体で演じるという、ちょっと聞くと小難しいインテリ芝居になるか「いぇいいぇいカブいたれ」なアイディア先行のお祭りエンターテイメントになるかしそうな試みを、どちらにも落ちずに軽々と跳び超えてみせた。

そもそも杉原邦生の演出する舞台にはストイシズムなどという言葉はまるっきり当てはまらなくて、つまりは、屁難しいこと考えてるヒマがあったら観てておもしろいことを思いつけよ、というスタンスが明確なのだけれど、それに加えて今回つくづく思い知った木ノ下裕一の超ポジティブ歌舞伎LOVE。この2人が力を合わせてえぇーいっ、とここまで行った。

稽古期間中、DVDを観て「勧進帳完コピ」の荒業をやってのけたのには、「あくまでも役者はハードウェア」という(演出家としての冷静な目線に立脚した)命題が背景にあると思われる。ハードウェアとして型をなぞる上においては、「伝統を背負って稽古を積んだ現代の歌舞伎役者」も「伝統を背負わずに自分の身体性だけを拠り所とする現代の役者」も、「過去に過去の役者によって上演されていたであろう演技」との間に何らかの距離を感じているに違いない点では(乱暴な言い方ではあるが)等価である。そこでもって「今ここにあるカラダ」と「ウン百年前に想定されていたと想像されるカラダ」との間をウロウロして楽しむことに対する勝算。その見立て。

そういう、観客がウロウロできる「遊び」をぽいっと目の前に提示してくれるのが杉原邦生の演出の一番楽しいところ。

「ハードウェア」としての役者陣、そこら辺の意識がよーく共有されているのか、誰をとっても出色の出来。上演中どこを観ていても飽きない仕掛けで、大いに楽しんだ。これ、横浜だけじゃもったいないよ。中学・高校の古典の授業でこれみせたら、きっとぐわーーっと世界と視界が広がること間違い無しだと思うんだけどな。

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