2010年5月15日土曜日

渡辺源四郎商店 ヤナギダアキラ最期の日

03/05/2010 ソワレ

うーん、凄い芝居だなー、と思う。畑澤版「S高原から」は、「死」をもって終わる人一人の生涯と「いつまでも残る」歴史の長さ・重さとを舞台上で一つの天秤に載せてみせる。こういうことができるなら演劇、大丈夫!と確信できる。

戦後65年の時の流れをギューッと3人の役者の身体(宮越・工藤・山田)に圧縮して詰め込んで、彼らの台詞・身体が90分間発するものが、受け手である観客の中で解凍され、65年間+未来へと続く想像力の豊かな広がりへとつながっていく。

宮越さんは、なべげんデビュー当時は「こりゃ驚いた!」の要素で拝見していたこともあったが、今やそれを大いに恥じざるを得ないほどの凄みのある演技。牧野慶一さんも「死すべき者たち」の時間の流れをしっかと見事に背負って出色。が、何より嬉しかったのは山田百次。弘前劇場・野の上・なべげんと拝見してきたが、達者で良い役者であるが故に背負わされる「芝居進行のダイナモ」役の制約を今回ついに乗り越えて、これまでで最高の演技とみた。そこにはもちろん、過剰な負担をかけることの無いように、という作・演出の愛情たっぷりの配慮があるのに違いなく、そういうバランスにも目が行き届いて大いに楽しんだ。

その代わり、といってはなんだが、チンピラ二人組のダブル工藤と医師・看護師コンビは割を食った印象がある。見え方のバランスはよいとしても、正直「もうちょっと抑えても大丈夫なんじゃないの?」という感じはした。いや、でも、見やすさのバランスからするとここに落ち着くのかなぁ。

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