2009年6月25日木曜日

西村和宏+ウォーリー木下企画 ハルメリ

24/06/2009 ソワレ

実際のところどうだったのかは聞けなかったけど、舞台を拝見した限り、幸せなプロダクションだったのではないかと思われた。すっきり気持ちよく観ていられた。

まず、戯曲が優れた出来で、焦点が個人⇒全体⇒個人という風に、一点感情移入型も鳥瞰神の眼型も許さないよう、程よいタイミングで、明確な意図を持って、しかもスムーズに移動する。役者17人使った「群像劇」にわざわざしてみせる「意義」がしっかりとある。
テーマそのものは、口が悪い言い方をすると「ありがち」なのかも知れないけれど、それを、焦点をずらし続けることで、一個人とか一つの主張とか、「群衆って怖いよね」とかに収斂させない。その収斂しない、物語の一つの線として回収させない中心の空洞に、これまた「ハルメリ」なる「ことば」を据えて、と書くとなんだか天皇制を扱った芝居みたいに聞こえるかもしれないけれど、必ずしもそうでもなく、でもそうとりたい観客はそう取ればいいさ的な、平田オリザの言葉を借りると「雰囲気と言ったほうがいいのかもしれないこの感覚」に満ちて、最後まで飽きさせない。

関西からいらした木下氏も、オーディションで集まった役者陣も、その優れた戯曲に妙に斜に構えることなく、すっきりと、かつ、自分の解釈を互いに、あるいは観客に押し付けず、素直に立っていたと思う。それが気持ちよい。

息子役の山岡氏が前半にフレームを嵌め、中盤からアイドル長野海が引っ張り、が、決して自分の物語として舞台の空気を回収することなく群像の中に帰っていく。テレビ討論のシーンは、そのテのテレビを全く見ない小生にはちょい苦痛だが、「ネタ」としてでなく「舞台」として見せることを心がける演出に救われる。

そうやって、1時間45分かけて、物語や主張ではなく、舞台の空気を提示して見せたプロダクションに敬意を。こういう引き合わせが、(少なくとも観客にとっては)幸福な化学反応を起こしたことについて、西村氏に感謝。

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