2008年4月21日月曜日

犬婿入り

20/04/2008 マチネ

出演者の塩野谷正幸氏がいみじくも当パンで述べているが、「犬婿入り」は小説世界のひとつの完成形であり、寝かしておけばよかった、というのはとても当たっている。
一体、この、在独40年の演出家渡辺和子氏は、どのような勝算があってこれを舞台化しようとしたのか。というのも、結局、まぁ、このテの、小説の 舞台化にはよくある話だが、元の小説を3回繰り返しで読んだほうがよっぽど面白くて、読者の想像力/妄想力も殺されなかっただろう、という結果に終わって しまっているからだ。

小説の世界を提示するのに、それをそのままなぞるのではなくて、この作品であれば「テレビのワイドショー」という枠をひとつはめることで何かを加 えようとする試みは、それはそれでよい。しかし、きっと、渡辺氏は、それが80年代日本で第三舞台や山の手事情社やそのエピゴーネンの学生演劇によってさ んざ使われていたことにはきっと思い当たらなかったし、周りも教えてあげなかったのだろう。しかも、今回の演出は、はっきりいって、それらに較べて、たる い。しかも、多和田さんがわざわざ電子メールで「喋り方はいかにもマスコミという感じを強調しなくて十分かと思います」と警告してくれているのにも拘ら ず、堂々とマスコミ喋りが強調されているのはどうしたわけか。

こういうのを観ちゃうと、やっぱり、日本の芝居はよその国に較べてすっごく進んでて、面白いんだなぁ、と言わざるを得ない。芝居が面白いのは、日本に住んでて数少ない良いことの一つだ。

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