2008年3月9日日曜日

龍昇企画 モグラ町

08/03/2008 マチネ

感想を一言で言うと、「大入りになってしかるべき、良い舞台だった」。

前日の金曜日に当日で入れるかな~と思って岩戸町に寄ったらなんと大入りで入れず、「前川麻子の集客力は衰えていないことを確認」と、すっごく失礼な感想をもちつつ土曜日を予約。土曜日も大入りであった。

僕にとって前川麻子とは、20年前「銀座小劇場のセンチメンタルアマレット」を観た「うーむ、これじゃあなあ」であり、「マニャーナ・セラ・マ ニャーナ」を観た「うーむ、龍さん、これ、続けるんですか?」であり、要は、20年前のネガティブな感想以来ご無沙汰している人だった。おととしに日本に 帰ってきて、昨年の龍昇企画で観たら、ちょっと感じが変わっていてあれっと思ったくらい。小説も書いているらしいが、読んだことはない。

前置き長くなったが、要は、「龍さんの芝居だから」観に行ったわけです。でも、そう思った自分を(ちょっとだけ)恥じるくらいに、良い芝居だった。

まず、「40-55歳の時間の捉え方」。50も半ばに差し掛かった役者および登場人物を考えれば、舞台に乗るのは過去の回想であり、来るべき自分の人生の終わり方であり、子供の未来である。それだけのモチーフで良い芝居はたーくさんできる。
が、モグラ町の5人兄弟+周囲の人々は、過去も背負っているし、人生の終わり方も考えなきゃならないはずだし、腹違いの妹の未来は一応心配してみ せるのに、みーんなそろって、そういうコンテクストを投げ出して、自分の今のことしか考えてやーがらないのだ。その「自分しかない、今しかない」の切羽詰 り方が、どうにも力強くて、楽しかった。

冒頭の役者の登場の仕方、カッコいい。塩野谷正幸さん、実は初見だが、カッコいい。こんな風に早口で誰に向かって何しゃべってんだか分からない様に台詞言って、役者の方を向いてんだか面切ってんだか自閉してるんだか分からない目線を保てるのはスゴい。

あと、気がついたのは、「どうしようもない男の描き方」に際しての、ロマンチシズムの入らなさ。どうしようもない男に引っ付いちゃう女性を描くの は、まぁ、同性のことだから醒めた目線で書けるのは納得できるが、異性に対してギリギリまで余計な目線を加えずに突っ放していたのが印象的だった。日頃平 田芝居に触れる機会が多いと、とりわけそう感じる。

龍さん以下、役者陣の演技ももちろん素晴らしくって、充分堪能。ここのところ龍昇企画の芝居は「年寄り人生振り返り・清算型」が続いていて、それ はそれでカッコよいのだが、今回の新しい切り口も充分カッコいい。当日パンフに「これからも前川氏との共同作業が続きそうな予感がする」と書いてらした が、是非、続けていただきたい。

(ラストのカズーぶーぶー合奏会は、ちょっと、ダサかったけど。照れ隠しであるとしても。ちょっと。)

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