27/02/2010 ソワレ
一昨年僕の心を激しく揺さぶった作品の再演。一部キャスティングを入れ替えて。
あちこちですごく評判が良いようで、安心した。他人事なのに、なんだか安心した。すごく安心したから、安心して好きなことを書く。
まず、この「戯曲」が傑作であることは間違いない。と、言い切る。英訳させてもらったから言うのではない。もしこの戯曲が2010年の岸田賞の候補にショートリストされていたら「わが星」と並んで本当に審査員を悩ませてしかるべき作品だったに違いないと、僕は確信している。今回の上演でも、それは確信できた。
そして、再演と初演を、特に役者が入れ替わったときには、比べちゃいかん、いかんのだけれど、やっぱり比べてしまう。好きか、嫌いか。うーん、それもきっと言っちゃいかん。いかんのだけれど、やっぱり言ってしまう。初演の方が好きだ。宇田川千珠子が舞台に戻ってきて嬉しくとも、橋口氏のつぶらな瞳にヤラれようとも、巣恋歌さんのドレスがグレードアップしていようとも、である。
これだけいかんいかんと言っておいて「初演の方が好きだ」と言ってしまったので、わたくしなりの理由を書きます。
「初演の魅力は離陸しきらないことの魅力。再演の魅力は軽々と翔ぶことの魅力。僕はどうやら離陸しきれずに地を這う芝居に、より多く魅力を感じてしまうらしい」
岡崎藝術座の魅力の一つは「地を這うグルーブ感」だと思う。そこから離陸せずに演じきったのが「ヘアカットさん」、離陸するようなしないような、でも上半身は華々しく、というのが「リズム三兄妹」。初演の素晴らしいシーンの一つはラス前内田慈さんの長台詞で、両足はぴたっと床について固定しているのに上半身はくるくると動いて、(誉め言葉ですよ!)まるでゴキブリホイホイにかかったゴキブリがもがくような肢体が素晴らしかったのだ。
今回、中村真生にそのもがきはない。軽々と舞って、すっきりとした味わい。あるいは、「地を這うグルーブ」に追われ、あるいはけちらされそうになる、その逃げ足の魅力。戯曲の「ことば」がより素直に迫ってくるのは、今回のバージョンなんだろう、と思う。
が、それでも僕は「離陸しそうでしない」瞬間の方が好きなんだ。きっと。そういう観方は必ずしも創り手や観客やその他色んな人を幸せにするとは思わないが、でも、そうなんだから仕方がない。
最初に書いたとおり「リズム三兄妹」は傑作だ。今回の上演も、素晴らしい。もっとみんな誉めろYo!と思う。そしてそうやってみんなに誉められれば誉められるほど、僕は安心して好き勝手なこと言えるのだ。
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