2008年7月20日日曜日

青年団若手自主企画 World's Dutch

19/07/2008 ソワレ 

作・演出本人にも言ったし、飲みながら5、6回は言ったので、もう辟易している人も要るかもしれないが、
「これを手放しで面白いといってしまったら、ウソな気がする。でも、面白くないということは全くない。そこらへんのほそ~いラインの上を、危ういバランスを取りながら、1時間15分集中を途切れさせずに観てしまった」
というのが正直な感想。

"World's Dutch" というタイトルでセクシュアリティについての芝居だと聞くと、まず「スカなのではないか」という疑念が沸きあがる。
英語では"sex doll" だから、"世界のダッチ"って言われても、"人間だったら友達だけどワールドだからワールドダッチ"、みたいな感じしかしないだろう(しないか。イギリス人がロボダッチを知っているわけないし)。

というわけだが、開演すると、辻美奈子(ヒロイン)が自分について客席に向かって語り始める。これは、①チェルフィッチュぽいのか  ②Vagina Talksっぽいのか、と考えてしまうのだけど、でも、結局どこにも着地せずに(というか、ほっぽらかしになってしまったかのように)、ラストまで行って しまう。入れ子構造も、整合性がついているのかいないのか、いや、おそらく考えてないんじゃないか?みたいな感じで処理されている。

話が進行するにつれて、これは肉欲万歳!!の話なのか、フェミニニティの話なのか、自意識についての話なのか、男ってバカね、な話なのか、世界と 自分との関係を確認する中で感じるざらつきの一断面として偶々今回セックスを採り上げたのか(僕個人はこの最後の選択肢を推す)。
おそらく、凄く陳腐な言い方で申し訳ないが、この芝居は上記すべてのちょっとずつであり、逆に、どれでもない。その、どこにも着地させないとこ ろが、この芝居の面白いところなのだけれど、じゃあ、それがかなりその狭いストライクゾーンに狙って投げた結果なのかといえば、そこは確信が持てない。も しかしたら(大変失礼ながら)結果オーライなのかもしれない。

この芝居を観終わって、その取り扱う素材にも拘らず「ドロドロした印象がない」のは、おそらく、セックスに関する話についても、「ドロドロする」 とか「観客を興奮させる」手前でほっぽらかしているからで、そこから先はかなり乱暴に観客に任されている。この寸止め感すら中途半端で、時としてモロな紋 切り型が噴出しかけるが、それすらも寸止めでとどまり、危ういところで道を踏み外さない。もちろん、その自意識の奥までを観客に晒さない作・演出や役者の 中がどれくらいドロドロしているかは、観客の妄想に任されているわけである。

ラストシーンは、おそらく、唯一、明確な方向感を舞台上及び観客に与えるシーンとなっているのだけれど、これも、「終わりのサイン」=オチ として観てしまえばさほどガックリ来るわけでなく、かつ、深刻にも陥らず。不思議な1時間15分。

ロンドンの「今年の目標!One night standは控えること!」とのたまった女性に捧げたい芝居です。

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