2008年7月22日火曜日

BoroBon企画 男たちのお料理教室

21/07/2008 マチネ

東京ガスのビル内にあるほんまもんの料理教室スペースを使って芝居をやってみよう。
ということで、70席ほどが調理実習スペースの周囲に用意されていて、うち男性客8人程度。全体の1割が男性というのは花組の本公演よりも若干比率が高くて、これも「男達のお料理教室」というタイトルのなせる業か。

芝居の中身は、有体に言ってしまえば「美味しんぼ」だか「クッキングパパ」だかを芝居でやってしまった、と、そういうことで、料理の中身・味と人 情噺をうま~くリンクさせて芝居に仕立てた、という、何だかつまんない芝居みたいな言い方になってしまう。でも、そもそも料理教室スペースを使って芝居や るという時点で、実は、そういう制約はバッチリはまってるのである。だから、仕方がない。

が、テレビのお料理教室の「先生の言っているとおりなら100%確実に美味しいお料理が出来ま~す」という誰もが知っているお仕着せの予定調和と、若干予定調和かかった芝居(でも目の前でリアルタイム料理)、が組み合わさった時に、思わぬ面白みが出た。

何が面白いって、目の前で火や包丁を使って料理作るのが面白い。段取りを間違えたり、上手く包丁が使えなかったり、火をかけたままあっちにいっちゃって観客がハラハラしたり、だし汁の匂いがしてきたり。
昆布だしを火にかけて、「小さい泡が底から上がってきまーす」・・・から、実際に上がってくるまでの間の沈黙。
具をどんぶりにあける時の緊張感。

芝居の勝負どころの1つとして「いかに何回も稽古しながら、初めてのように演じるか」というのがあると思うが、特に溝口健二さん、ぜったいに、何 回稽古しても、何べん本番くぐっても、料理うまくなってないに違いない(=初めて料理教室に来たかのように演じられる)と思う。それがまた凄い。

例えば、ちょっと古いが、「料理の鉄人」が実は調理人の台詞や動き、弟子の動きやアクシデントまで全部シナリオできっちり決めていて、料理の出来 上がりまですべて台本どおりだとすると(本当はそうなんですか?)、この芝居はそれに近いのかもしれない。少なくとも飽きるまでは、僕達はその鉄人達のお 芝居を充分に楽しんでいたと思うし。
プロによる調理の予測可能性が余りにも高くて演劇に適さないのであれば、素人の料理=お料理教室。その発想は、当たり。でも、二匹目の泥鰌はいないかもしれない。

あ、そういえば、何年か前、ロンドンにベルギーの料理人集団がやってきて、バービカンの舞台上で料理作ってサーブする、というパフォーマンスをやっていなかったっけ?でも、それは、予測可能性が高すぎて、芝居にはならず、ただのあざといレストラン、みたいな印象だった。
日本でも、去年の庭劇団ペニノには料理シーン出てきたし、乾電池の「おとうさんのおとうさん」でも鍋をつついていたけれど、今回の「男達の料理教室」のように「料理する行為」を虫眼鏡で見せたりはしていなかった。と思います。

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