2006年10月1日日曜日

渡辺源四郎商店 背中から四十分

坂手洋二さんに言わせると、
「近代劇の一つの正統であるところの1対1対決ふたり芝居」
だし、僕が思ったのは、
「コナー・マクファーソン流の、骨太モノローグ合戦芝居」
なのですが、作家ご本人は、
「ゴドー待ちみたいなものを作りたかった」
とおっしゃる。

ゴドー待ちにしては、単線で(リニアに)展開する芝居。
ゴドー待ちのような、「どこにも行かない」感は、この芝居には無い。代わりに、登場人物2人の骨太・シンプルな物語がある。意地悪く言えばありきたりの設定。

が、そのリニアな展開をこれでもかと説明、無理強いしないところがすばらしい。そこにこの芝居の味わいが生まれる。
で、そのための仕掛けが、「マッサージ」という身体の動きであります。
マッサージしている時はきちんとマッサージしなきゃなんないので(これ、当たり前のことですが、その当たり前のことをしてない芝居って結構多いですよね)、
「生き死にのことを考えているだろう登場人物」と、
「指先の感覚や背中の感覚に意識がいっているだろう登場人物」
の間には、常にギャップがあって、観客の意識はそこを行き来できる。そこに想像力がはたらく。

シンプルでリニアな設定にシンプルかつ効果的な仕掛け。
坂手氏は舞台装置を「アンシンメトリーの教科書のような舞台」と褒めてらっしゃいましたが、
小生、この芝居を「役者の意識を物語の説明、泣かせに向けないためにはどうしたらよいかの教科書のような舞台」
とでも呼びたい。

畑澤さんが高校の先生だからか、何だか、教科書のような、という言い方をしてしまうが、他意はありません。

と、かように教科書的にきちんと出来ている戯曲ですので、力の足りない役者がやると、性質の悪い新劇か学生演劇になってしまうでしょう。

役者4人に力があるので、その点も安心。
山内さんをアゴラで観るのは何年ぶりだったか忘れたが、相変わらず素晴らしかったです。勿論、他のかたがたも。

良い芝居、堪能しました。
土曜日のソワレ、もっとお客さんがいても良かった。

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