2009年1月29日木曜日

toi 四色の色鉛筆があれば

27/01/2009 ソワレ

劇場で感涙をこぼすことはなかった。でも、次の朝、通勤途上嫁に電話して、ハイパーリンクんのことを説明してたら、涙がこぼれそうになった。

この芝居はきっとあちこちで誉められるだろうから、今更僕が誉めてどうなるものでも無いだろう。シアタートラムの両サイドに立ち見客が一杯に入って、満員の客席が本当に息を呑む場面が何度もあった。

柴幸男氏もきっとあちこちで誉められるだろうから、ここでは殊更に誉めない。むしろ、こういう幸せな座組みを組んでみせる主宰の黒川さんと制作宮永氏に、まずは僕として最大級の賛辞を送ります。

あゆみ: 3人での上演は、アゴラで観た10人バージョンに比べて時間が若干うねって、かつ、トラムでは客席が遠いので、観る側として最初集中力を欠いてしまった。中盤以降そのうねりに上手く乗れたところで、エピソードにぐいっとネジが巻かれて、それでぐっと来た。
でも、この、観客席と舞台との距離はどうしようか、と思っていたら、

ハイバーリンクん: その広さを活かして、観客の想像力を宇宙の果てまで連れて行ってくれちゃったのである。もちろん、宇宙の臍には永井若葉さんがいる。永井さんほど、芝居の臍に居ることが似合う役者はいない。一昨年の東京デスロックでの「社会」、去年のハイバイの「て」、そして今回。シビれる。

反復かつ連続: 客席が音を立てずにどよめいた。小生もDVDを観てスジそのものは理解していたけれど、台詞の積み重ねが生み出す「時間の厚み」の質感に驚愕。星野大輔氏の音響、(本人や音響屋さんにしたら大したことないのかもしれないが)、繊細なり。内山ちひろさん、素晴しい。家族に自慢してやろう。

純粋記憶再生装置: 「台詞と動きの分離(ク・ナウカですか)」「落語張りの1人で2人分台詞(去年ハイバイで観た)」「時間の逆行(エイミスのTime's Arrowを思い出した)」等々、パーツパーツでは「どこかで観た感じがする」のかもしれない。
でも、「オリジナルなネタ」を見つけ出すのが柴氏の真骨頂なのではなくて、そういうものどもをきめ細かく繊細に紡いで、グイッと世界を切り開く感覚が素晴しいのである。

4つの作品ともそうなのだけれど、ミクロな次元での微細な動きがこまかく積み重なって、大きなうねりになる。でも、それが大げさなものになる前に収まりかけて、また思わぬ方向に変化しながら細動を止めることがない。そういう寄せては返しながら、時間の流れを操る手管にシビれてしまうのだ。

観ていてもいつまでも幸せだし、舞台にいたらもっと幸せなのに違いない。感想を語り合えたらもっともっと幸せだろう。今回見逃した方々も、観た人の話を聞いたら、きっと幸せな気分になると思います。

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