2016年7月15日金曜日

Human Animals

11/06/2016 15:00 @Royal Court Theatre, Upstairs

ロンドンの街にキツネやらハトやら何やら、動物が異常に増えて溢れて、感染症の懼れが広がって、動物の駆除が始まって、人の出入りまでもが制限されたときに、そこに閉じ込められた人々がどう振る舞うのかという話。もちろん舞台上に動物は出せないから、外の様子は6人の役者の会話から推測するしかない。すなわち、役者の会話の外でドラマが進行している。現代口語演劇まであと一歩。

この芝居の面白さは、街が動物で覆われる事態を、大掛かりなハリウッド映画で見せるのでなく、登場人物のミクロな感情の揺らぎで見せていくところにある。母と娘、パブで知り合った男二人、若いカップル。もしこれらの会話がもっと微に入り細に入り、完成度が上がっていたなら、窓の向こうに血が飛び散る仕掛けすら不要の厳しい芝居として成立していたはずなのだけれど、惜しい。

もちろん、異物としての動物は、人間をあらわすメタファーと取ることも出来る。特にロンドン近辺でどんどん増えていく移民・難民。コミュニケーションが取りにくく、何を考えているかも分かりにくく、自らの生活を圧迫しているかのようにも感じられる存在。そういう意味では、イギリス人の観客は登場人物の側、筆者は動物の側にいる。曲がりなりにも税金払ってる筆者と違って、職探しも、声を挙げる機会を見いだすことも、コミュニケーションの手段を手に入れることも難しい移民たちが、この舞台の上の動物だとするならば、この芝居がEU離脱の国民投票の直前に上演されたことには微妙な意味がある。

もし、この芝居で「動物」を持ち出さず、その代わりに言葉の全く通じない「人間」を使っていたら(かつメロドラマに落とし込まなかったなら)どんな恐ろしい芝居に仕上がっていただろうか、と思うと、やはり、惜しい(ん?それって、ひょっとしてブレードランナーか?)。作者のStef Smithは昨年エディンバラで観たSwallowの作者でもある。そう言えばSwallowも惜しい芝居だったな、と。

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