2010年7月10日土曜日

柿喰う客 Wannabe

09/07/2010 ソワレ

今は亡い、とある友人が、チェルフィッチュの山崎ルキノさんがテレビに映っているのを見て「どうしてこの人はこんなにも自信にあふれていられるんだろう?」と、本当にポジティブに感心していたのを思い出した。それくらい、柿喰う客の連中は、アフタートークの場で中国や韓国の大先生(っぽい人)たちを前にして、自信に満ちた面構えで、どーだ、とばかりに客席を睨めていたのだ。

中屋敷法仁がトークでも言っていた「国際交流企画の中で、殊更に文化の間の違いを強調するのではなくて、むしろ『僕達、同じじゃないか』と感じながら、あるいは信じて、進めてきた」という言葉は、現在の、文化間の違いへのセンシティビティがソフィスティケーションのしるしと見做されている状況、かつ、柿喰う客の芝居の中では「みんな同じ」ではなくて「役者一人ひとりが愛しいものとして扱われている」状況を踏まえて発せられる時、実は、とても重い。ネガティブな見方やスカした目線がインテリの印、インテリジェンスなしじゃあ国際交流ムリ、みたいな甘っちょろい考え方に、完全ポジティブ路線で、しかも明るく楽しく対峙してみせる柿喰う客の連中は、本当にかっこいい。

芝居の方は、プロットはシンプルに、でも一つ一つの反応は極めて大切に。ヨーロッパの一軒貸し学生宿舎の風情で、ちょっとだけ平田オリザの冒険王を思わせる。ネタバレになるのでここでは書かないけれど、アフタートークで中屋敷氏の言っていた「だって、みんな地に足が着いていないでしょ?」というコメントは、この芝居の全体のトーンを見事に表して、これも冒険王を思わせるし、それが柿の芝居からつかめちゃうというのがまた、素晴しい。

アフタートークの、日中韓英4ヶ国語が飛び交って、舞台上・客席内、色んなところでスポンテイニアスな通訳が始まって、一つものをいうと全員に伝わるのに5,6分かかってしまうような、でもそれが許容されてしまうような状況も面白かったし、韓国から来た大先生が、「稽古期間は短かったのか?」「君らはプロか?」「もっと日中韓の違いを出さないと」みたいな、あからさまにこの芝居を「素人が短期間で仕上げた芝居」扱いしていたのも、これだけ力があって魅力的な芝居を観た後だと笑い飛ばしてしまえるし、と、他にもいろんなポイントはあったのだけれど、やっぱりこの芝居の一番の見所は、役者達の押し付けがましくない自信に満ちた佇まいですよ。

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