2010年4月10日土曜日

タテヨコ企画 ウツセミウツラ

07/04/2010 ソワレ

初日。
大変面白く観て、気分よーくスズナリを出た。

まず、舞台美術。濱崎氏の舞台は、タテヨコ企画の芝居ととっても相性が良い。気が利いているのに突っ張ってなくて、暖かみがある。今回も「中庭」チックな空間がふわっとくるまれていて、スズナリの中で遠近が効いているのに役者が小さく見えない。天真と百合江の二人のシーンは、内なる宇宙と外に広がる世界を同時に映して美しかった。

おハナシの設定はタテヨコ企画おなじみの「お坊さんもの」。コンセプト自体に驚くようなことはない。乱暴に括ってしまうと若い修行僧の視点に立った教養小説チックな話なのだけれど、そこには一つ仕掛けがあって、
「禅寺だけに、本質をつかんだと思った瞬間それはスルリと逃げていく」
ようになっているのである。

例によって例のごとくいろんな人たちが出てきて、いろんな出来事が起きる。通常の教養小説ならそれを通して何かしら主人公が成長して、何かしら結論・教訓じみたものを得て、観客も何かしら「観る中で成長する」んだろうけれど、そうは問屋がおろさないのが禅寺の妙。

だから、「因果応報」と「風呂敷の畳み方」を気にせずに安心して観ていられた。その場の役者の表情、動き、ストーリーと関係ないところのちょっとした破れ、そういうものに集中して観ていられるという点で、「誤解を恐れずに言えば」東京デスロックを観るのと同じように楽しかったのである。東京デスロックをみんなに勧められるのと同じように、今回のタテヨコ企画、お勧めなのである。

小田豊さん、肝心要の芝居のへそを「ぎゅうっ」と締めて素晴らしい。西山竜一さんも、悪い人のようで実はいい人と言えないこともないけれど結局悪い人なんじゃないの?、みたいな、何ともおかしみのある役作りで出色。彼が退場する場面はちょっと涙出そうになった。ちゅうりさん、客入れ中にはけて、そのままカーテンコールにも出てこなかったが、一体どこへ行ってしまったのか。それが謎。

こんだけ誉めたんだから一点だけ難癖付けるとすると、セミの声。ミンミンゼミとつくつく法師を一緒に鳴かせてはいけないのではないか。昼下がりのミンミンゼミから夕方近くのつくつく法師、といった具合に鳴き声のブレンドを調整するくらいのことはしても良かったと思うが、どうか。

0 件のコメント: