2008年10月14日火曜日

映画 東京人間喜劇

13/10/2008

青年団の役者陣を贅沢に使って、しかも出来上がった映像はきっかり深田晃司の眼で見た世界。「深田氏の眼には、青年団の役者はこんな風に見えていたのか!!」という驚きがとても新鮮だった。

芝居で観ている時にはどうしても奥行きがある三次元の空間で役者が動いていることに無自覚なのだけれど、映画のスクリーンの二次元に役者が映され ると、そこに、監督の目で切り取られ配置された「カタチ」と「色」の概念が生まれて、うなじや背中や全体のシルエットやおでこどもが、ニットやマフラーに いろどられてスクリーンの上を滑っていく。映画を見つけた人にはごくごく当たり前のことなのかもしれないが、少なくとも僕にはそれが非常に新鮮だった。

岩下徹さんのパフォーマンスは「晩春」の能舞台を思わせたし、志賀廣太郎の医師は「鉄男」の六平さんを思い出させる。佐藤誠・大竹直・酒井和哉の3人のシーンは、ここでは敢えて言わないが、出色の出来。

「全体に生きる個の孤独と、そこにある『救済の可能性』」と、チラシにはあるが、まさに、救済の可能性について思いをめぐらせるきっかけとなりう る映画で、そこには何の説教臭さもあきらめもなく、ひとつの世界が提示されている。「人間喜劇」とはよくぞ名づけたものだ。満喫した。

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