19/10/2008 ソワレ
これまで一体何回桜の園を観たことがあったっけ、と思い返すと、実は片手で数えるほどでしかなくて、自分でも、まさかそんなことは無いだろう、と思うくらい、観ていない。それにしては、ロパーヒンやトロフィーモフやリューバやガーエフの姿を色々なバージョンで色々な場面で何度も観た気がするのは、それだけ何度も桜の園を読んでいて、その度に、脳内で役者達が勝手に動き回っているのだろう。
そういうフラッシュバックの有り様を、今回の三浦演出は、なんだか丁寧に拾い集めて提示してくれた気がするのだ。
愚痴のエピホードフや老いたフィールスをはじめとする面々は姿を見せず、舞台上には6人のみ。物語の順番もハナから無視されていて、なんと言ったって、ロパーヒンがバーンとベンチの背を叩いた瞬間のピアノの打鍵の音は、そのまま、桜の木が倒れる音である。
舞台上に敷き詰められた一円玉を踏み分けて堂々と歩くことを許された登場人物はロパーヒンただ1人で、小林洋平、その大役を見事に果たして凄みがある。ところで杉山よ、一体何円分両替したのか?
で、僕は、「ちっちゃなお百姓さん」ロパーヒンにも、理屈屋のガーエフへも、トロフィーモフへも、リューバにも、アーニャへもワーリャへも、すなわち、全ての登場人物に、移入できてしまうのだ。それは「桜の園」がそれを許すように出来ているのかもしれないし、三浦演出のせいかもしれない。どちらかは分からない。
でも、いずれにせよ、今回の桜の園では、僕が桜の園に触れた時に毎度毎度フラッシュバックする感覚を、少なくとも、邪魔することなく、1時間半、楽しめた。それはとても嬉しい。
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