2008年10月25日土曜日

元祖演劇乃素いき座 虫たちの日

25/10/2008 マチネ

「不条理ってなんだい?」
「ええっ?不条理」
「そう。不条理劇って」
「あぁ、そりゃ、辻褄が合わないとか、そういうことだろ」
「不合理ってのは?」
「それは違うな。不条理と不合理は違うよ」
「要は、話の筋が通ってないってことなんだろ?」

これ、今日、開幕前に実際に客席で流れていた会話です(筆力不足で申し訳ない。本当はもっと面白かった)。

で、いき座による別役不条理劇なのだが、これがすばらしい。
別役不条理劇というと、どうしても、受付とか、男1とか、家族(らしき人たち)とか出てくるのかなー、と思ってしまうけど、これは、夫婦2人でご飯食べる芝居。
趣としては、平田オリザの2人芝居のようで、一体何が不条理なのか、と思ってずっと観ていた。

2人でご飯を食べる時の、時々舌が鳴ったり口が鳴ったりするのが、なんとも心地よいのが不思議だ。前半の夫婦の会話のかみ合わなさの間合いがなんとも絶妙で、「不条理」というより「あまりのリアルさ」に、涙を出して笑った。

ストーリーを分かりやすく組み立てていくことで時空を織り上げる(というより、「間を持たせる」だな)芝居を蹴散らすかのように、この、かみ合わ ない台詞が場の空気を目の詰まった糸で織り上げていくプロセスに、いき座の凄みがある。そうやって織り上げられた世界に、ラスト近くの妻の台詞でサッと亀 裂が入るのが感じられて、最後の土井さんの台詞によって世界が切り裂かれ、観客は宙に放り出される。

あ、これは、不条理だ。

と、放り出された一瞬に、感じた。

こういうクオリティの高い芝居は、もっともっと多くの人々に見られてしかるべきだ。この芝居は金沢に持って行くなんて話も聞いたが、これや、「阿 房列車」等は、もっともっと、日本中の人に観てもらいたい作品です。いろんな街の小さな空間に、50-60人の老若男女が集まって、じっと息を潜めて、こ ういう芝居を、1時間1本勝負で観て、観終わった後、ふーっ、と1つ息をついた後に、美味しい食事でもして帰れば(あるいは、帰って夫婦一緒にご飯を食べ れば)、それが幸せってもんでしょう。

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