2009年9月15日火曜日

秋吉敏子さんのこと

Nむさんのブログを読んでいたら、秋吉敏子さんのことを思い出したよ。
(今はもっぱら「穐吉」と綴られているみたいですが、当時は当パンも含め秋吉と書いていらっしゃいました)

田舎町に秋吉さんのピアノトリオがやってきて、田舎の高校生達が連れ立って聴きに行ったんだけど、いたく感動した田舎の高校生は、秋吉さんからパンフレットにサインもらうついでに、こんな質問をしてしまった。
(何分田舎のことなので、世界レベルのピアノトリオが生で聴ける機会は2年に1度くらいだったと思う。そして何分田舎のことなので、演奏が終わったあとも何だかのどかで、たっぷり時間が取れたんだ)

「ピアノは自分のために弾くのか?人に聞かせるために弾くのか?音楽でおカネをとることをどう思うか?」

秋吉さんがあと20歳くらい若かったら、横面を張り飛ばされていたんじゃなかろうかと、今となっては思われる位のひでえ質問なのだが、さすが世界の秋吉さん、慌てず破顔一笑、

「もちろんピアノは自分のためよ。でも、誰も聞いてくれなかったらさびしいじゃない?」

それだけだよ。小岩の安アパートに住んでいた時分、ピアノの練習の音がうるさいと文句を言いに来た近所の人が、彼女の鬼の形相に文句も言えずに逃げたとの伝説を持つ秋吉さんが、笑ってそれだけだよ。
その夜、田舎の高校生は、「オレはさもしい。こんなにさもしいのでは、オレはゲージュツで生きる人には絶対になれないだろう」
と思ったんですが。まあ、その予想の通り、ゲージュツで生きてはいないんですが。

まあ、自転車に乗るようなもんだ。左にハンドルを切るか右にハンドルを切るか、考えてても仕方ないだろう。
「正しいバランスだから自転車に乗っていられる」 のではない。
「自転車に乗っていられるのが正しいバランス」 なのです。多分。

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