2009年9月24日木曜日

鳥の劇場 シンポジウム「アーティストがつくる劇場」

21/09/2009 19:30

パフォーマー・劇団運営者・劇場運営者・プロデューサー・観客が、「しかの心」で車座になって、「アーティストがつくる劇場~可能性と突き当たる問題」について語り合った。「車座」ってのは一つ大きなポイントで、パネリストの発言過多にならず、まず、良し。

京都・鳥取・熊本・長田・つくば・那須、否が応でも、余りにも地域間で状況が異なることにみなが自覚的になってしまう。具体的な結論は出なかったにせよ、(聴衆の一員としての僕にとっては)大変有意義な場に居合わせることが出来た。

鳥の劇場中島氏の「理想の劇場とはどんな状態を指すんですか?」というシンプルな問いかけに対してすら答が一様でなかったのも面白かった。各地域でパフォーミングアートが置かれた状況と、そこから見える射程の差異が示されるように思えた。
熊本: そもそも稽古場・上演場所の確保に汲々とする
つくば: 場の確保から劇団の活動が始まる。そこで必然的に地元との交流が生まれる
京都: ある意味恵まれている。稽古場は無料(京都芸術センター)、アトリエ劇研の「質の高いカンパニーを発掘・育成する」という明確なスタンス、「劇場として」何ができるかという問題意識
長田: 育てようというプロデューサーの意図と、その「仕組み」にフリーライドしがちなカンパニーとの間の齟齬
那須: いかにコンパクトに、パフォーマーにとっても観客にとっても幸せな劇場を作るのか。釣堀を始めたら地元の人が寄ってきだした

最も面白かったのは、熊本第七インターチェンジのパフォーマー・ACOAのパフォーマーの発言が突きつけた「経済」の問題 - パフォーマー個人レベルの経済、カンパニーの経済、劇場の経済 - と、杉山氏がこだわる「質の確保」の問題とが、お互いに切り離して整理して議論しなくては、とみんなに自覚されているにも拘らず、どうしても切り離しきれないところ。難しいよ。でも、そういう局面での、杉山・大谷両氏のプロデューサーサイドからの、でも、上から目線でない発言はちょっと心強い。

心に残ったのはACOA主宰・釣堀店主の鈴木氏で、
・ 動員数が増える・キャパの大きい劇場で公演が打てる、ことと質との間に必ずしも相関は無い
・ 経済の規模を広げることが劇場・パフォーマー・劇団の幸せと必ずしも相関しなかったりする
・ 以下にコンパクトに公演の場を保ちながら活動を続けられるか
という問題意識が明確で、かつ、そこに至る経緯もお聞きするにつけ、すっかり鈴木氏のファンになってしまった。

中島・大谷・杉山氏をはじめとする、問題は手に余るほど抱えているが、次の一歩に向けてアクションの引き出しを持っている人々と、次の一歩をどこに踏み出すかについて思いあぐねる人々、どちらもが率直に話し合えるシンポって、
「鳥の演劇祭らではですね」っていうと余りにも身びいきの過ぎる宣伝文句みたいで嫌だが、でもやっぱり鳥の演劇祭ならではだったんじゃないかと思う。珍しく、聞いてて気持ちの良いシンポジウムだった。

あ、もちろん、シンポジウムの後の懇親会も素晴しかったです。美味しいお酒、食べ物、美味しい空気、星空、カエルの声、楽しいお話。満喫しました。

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