2007年12月10日月曜日

ナイロン100℃ わが闇

09/12/2007 ソワレ

いや、本当に、ケラさんは頭の良い人です。そして、サービス精神も旺盛です。お客さんのかゆいところにとことん手の届くお芝居を作ります。3時間15分掛かっても、それは決して自己満足の長尺芝居とはわけが違います。

でも、これほど殆どのことがきっちり回収されて説明されてしまうと、僕が想像力を働かす余地はなくなってしまうのです。コーヒーのダバダだって、 囲炉裏で何焼いているかだって、わざわざ説明しなくたっていいじゃないですか。分かってる人がイヒヒと声を出さずに笑ってればいいじゃないですか。要は、 「少しはほっといてくれ!」と言いたくなってしまうのだ。

と、それほどまでに懇切丁寧に説明のカタをつけていってくれる、心優しいケラさんの手管に、観客席からは笑いが絶えない。でも、それは何だか、「ほぅら、面白いだろ、笑えよ、楽しめよ、愚民ども」って言われてるような気に、僕をさせるのです。

もし、そういうじれったい説明が入るために3時間以上掛かるのだったら、余計な説明をしないで上演時間縮めて、2時間で終わってほしい、というのが正直なところ。
どういうところが縮められるかって、
たとえば、平田オリザの「ソウル市民」のラストシーンと思しきシーンの後にアナウンスが入って、
・ さて、この後、手品師は再び現れるのか、
・ 謙一と淑子の逃避行はどのような結果に終わるのか、
・ 叔父の満州行きはどのような顛末を迎えるのか、
・ 大篠崎商店の栄光の歴史、は果たして完成するのか、
・ 表の門は本当に直ったのか、大工の出番は本当に冒頭だけだったのか
は、一切説明がないまま、この芝居は終わる。
って説明したら、やっぱり芝居、長くなるはずだ。その積み重ねが3時間を超える上演時間に繋がっていて、でも、そういうくどい説明をすることで、 お客さんが「あぁ、そういえば、あのひとあれからどうなるんだろうね?」なーんて2人で話しながら帰ってたりして、本当にケラさんの芝居はエンターテイメ ントとしてお客さんの面倒見がよいのである。アフターシアターの話のネタまで提供してあげて。

でも、やっぱり僕はこの手の芝居で3時間は長いと思うし、たとえそれがケラさんの考えていたスマートな落ちとズレていても、「勝手に想像する」余地を残していてもらいたいと思う。

要は、折角スマートで恩着せがましくない説明を受けているのにそれをうざったく感じてしまう僕は、ナイロンにとってはお呼びでない、ということなんだろう。

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