2010年6月14日月曜日

SPAC 若き俳優への手紙

12/06/2010 マチネ

SPACの週末三本立て、無料バス弾丸ツアー。この日は三本とも「テクスト」語りを中心にお題が組まれて、しかもそのテクストの扱い方がすべて違った。
第一弾はオリヴィエ・ピィが静岡で2008年に自演した「若き俳優への手紙」。日本語版台本を平田オリザ、演出を宮城聡のタッグで送る80分の二人芝居。

厳しいところを狙いに行った芝居だと思う。
80分饒舌に語り続けるにも関わらず、そしてそれが、舞台上を含む様々な場所で発せられる言葉について語る言葉であるにもかかわらず、その舞台上で詩人によって発せられる言葉自体が、(このように客席に対して語りかけられる芝居でよくあるように)この芝居の主題について伝えたいことを伝えているようにはとても思えないのだ。

ところが一方で「テクストの字面は何も語らない。テクストは状況や身体性を通して語られないことを語り得る」という、割と現在では通りの良い命題・落とし所に対しても、このテクストは「フットボールの試合と一緒にするな」と釘を刺してしまう。

そのくせ、再度裏を返してみると、どうも(語り手あるいは作者)自らがテクストに拘っていることの無謀さと滑稽さについても、自覚されている気配が濃厚である。どうにもやっかいなテクストである。

何重にもテクストに対する立ち位置をひっくり返しながら、この語りが演劇として成立するストライクゾーンは、たぶん恐ろしく狭い。そこを狙いに行ったのか。

その困難な企てに立ち向かって80分立ち続けるひらたよーこの男気や良し。が、前半やはり緊張していたのか、微妙なコントロールが狂って、ぐぐっとストライクゾーンに引き寄せられるところまでは、僕は行かなかった。が、まぁ、野球の楽しみは勝ち負けだけではなくて、微妙なストライクゾーンを巡る投手と打者と捕手の駆け引きを眺めたり推理したりするところにもある。気に病むことはない。心おきなく微妙なタマを投げ込めるプロダクション自体が気持ち良いのだ。

0 件のコメント: