2010年6月17日木曜日

庭劇団ペニノ アンダーグラウンド

13/06/2010 マチネ

これは「手術ショーが暴走し破綻する過程」を芝居に仕立てたものではない。
「模擬手術ショーの体を借りたエンターテイメントショーが暴走し破綻するように見える過程」を芝居に仕立てたものだ。
それは僕がここに書かずともみーんな知っていることだ。マメ山田さんが冒頭出てくるなり「これはショーです」と語りかけるし、「これらの機器は見かけだけ。ニセモノです」というし、患者役は顔と腕だけ出してあとの身体はベッドの下に隠してしまう。大体、最初から、生身の人体解体ショーなんか上演できるわけ無いし。

この芝居を観て、「何だか生々しさが足りないなぁ」とか「この薄っぺらいニセモノ感がどうも」とか、逆に「段取りが妙にリアルだ」とか「臓器の模型は、そうと分かっていてもニガテ」とか、そういう感想が出るのは何となく想像つくが、で、僕もそんなことを色々思いながら観てたのだが、最も驚いたのが「自分はなんと悪趣味で意地悪な想像力の持ち主であるか」ということだ。

悪趣味でもなければ、マメ山田さんがピア・スズキさんの前で「肝臓をコツコツと指し棒でたたいてみせる」ときに、「あぁ、もっとこれがグニョグニョとした感覚であったなら!」とか、思うわけが無い。坂倉奈津子さんが腸を引っこ抜いてしまう時に「あぁ、もっと制御不能に腸がグニョグニョと登場人物たちにからまってしまったなら!」とか、思うわけが無い。

タニノ氏がトラムのステージに載せているものは、それ自体が「悪趣味なもの」として完結しているものというよりも、むしろ「もっと悪趣味を!」という観客の望みを増幅する装置なのではないか、と思われたのだ。それにうまいこと乗っかって自分の悪趣味をはらわたのようにずるずると引き出されてしまった自分に、苦笑といっていいのか嫌悪といっていいのか、どうもフクザツな心境である。またタニノ氏にまんまとやられたということだ。

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