2015年10月11日日曜日

King Lear with Sheep

03/110/2015 19:30 @The Courtyard

羊8頭と人間1人によるリア王の上演、45分。

タイトルが、”King Lear with Sheep"であって、”King Lear Performed by Sheep"でないことに注意が必要。確かに、羊の中の一頭は紙で作った王冠をかぶっているし、娘の衣装をまとった羊たちもいた。が、大方の予想通り、登場する羊たちは芝居のプロットには一切興味を示さず、舞台上にばらまかれた餌を食み、フェンスに身体をすりつけ、蹴込みの幕を留めている黒ガムテを噛んで引っ張り、時たま観客に眼を向けながら糞をひり出すばかりである。動く置き道具みたいなものである。

そうすると、あとは、人間の役者がそれをモチーフにしてどう芝居を作るか、という問題になる。

つまりこの公演は、「羊によるリア王の上演を、観客に観てもらう公演」ではなくて、「羊にリア王を上演させようとしたらどうなっちゃうのか、という状況を、人間が演じて、それを観客に観てもらう」公演なのであある。まぁ、そういうものとして楽しめば相応に楽しく、興行主の役の俳優がリア王のセリフを自ら発することで帳尻を合わせようとするシーンも、それなりに滑稽ではあるが...

実は、冒頭、羊たちの登場を待つシーン(既にこの公演のメタの構造がそこで示されているのだけれど)で、役者の妙な照れを感じて、既にちょっと興ざめしていたのだ。つまり、「あれ、おかしいな」と、(1) 客席目線に近いところでスタートするのか、(2) そういう演技であることをあからさまに曝しておいてスタートするのか、とでは、その後の観客のメタ構造への入り込み方に差がでてくるんじゃないかなと思ったのだ。この公演では役者は(2)を選択肢していて、僕にはそれが良い方向に働いているとは思えなかった。
結果、それなりに楽しかったけれども、もっといけたはず、エンターテイメントとしては羊たちの予測不能な振舞いに救われたね、ということになるだろう。

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