2015年11月3日火曜日

Plaques and Tangles

31/10/2015 15:00 @Royal Court Theatre, Jerwood Theatre Upstairs

若年性の認知症が発症した女性とその家族を描いた芝居。テーマとしては、現在ウェストエンドで絶賛上演中のThe Fatherと同じく、認知症患者とそれを取り巻く人々の関係をシリアスに描いて、力の入った舞台であることは理解するけれども、残念ながらそこまで。The Fatherと比べると、芝居のフォーカスの強さ、構成の巧拙において、遙かに及ばない出来映えに終わっていた。

認知症という病気が「劇的」であるのは、患者の認識と周囲の客観的状況が食い違う、というところにあると思う。The Fatherは、舞台に載せる状況を患者の認識に合わせる「一人称」の構造を採用し、そうした状況の不整合、破れ、矛盾といったものを観客に示して、大きな効果を挙げていた。
このPlaques and Tanglesでは、その「視線の使い分け」が若干混濁していたように思われる。一人称の「本人の認識が整合性を持たず当惑する」シーン、他の家族の構成員が患者を見つめてそれぞれの見方を吐露するシーン、それらが一度に舞台に載って、観客から家族全体を俯瞰するシーン、過去の本人が登場する(それは、客観的な事実と示されているのか、本人の記憶の中身なのかは判然としないが)シーンが、それぞれ、相応の思い入れを持って提示されるのだけれど、それがうねりをもって繋がっていかない点を、敢えて「巧拙」の問題として語りたい。

様々な人々を均等に描こうとして、ちょっと出来の悪い群像劇のようになってしまったのも勿体なかった。

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