2017年3月26日日曜日

Lost Without Words

18/03/2017 18:00 @National Theatre, Dorfman

キャリアの長いシニア俳優(70代、80代)を6人舞台に載せて(筆者が拝見した日は男性がお一人都合で出演せず、5人のプロダクションとなったが)、
演出家2人の演出のもとで、即興の芝居を披露する、という試み。なんだか大喜利っぽくもある。完全即興の掌編5本、大変楽しんだ。

当日のお題は、(1)前庭で世間話する老人二人、(2)"d"を使わないで話して下さい、(3)ベッドの二人、(4)弟の思い出独り語り、(5)居心地の良い地元のクラブ、(6)全部の台詞で韻を踏んで下さい、の6本立て。

筆者の先入観として、英国の役者は「既にある言葉を発する」ことを重視している印象があって、自分で台詞を創りながら話さなきゃならない時にどういう態度を取るのかには非常に興味があったのだが、やはり、状況を説明しだしてしまう人あり(説明台詞100%!)、演出に与えられた状況をそのまま台詞として発語してしまう人あり、つなぎ・受身の演技に徹して物語の進行への貢献は放棄する人ありと、様々な反応が見られて興味深い。でも、やっぱり、筆者にとっては、物語をどこかに運ぼうとしない演技の中から裂け目が現れて、舞台上の空気が突拍子もないところへと向かっていく瞬間がいちばん楽しかった。

演技中に容赦なくだめ出しする演出家二人。「こう言って下さい」「こう展開して下さい」「その展開はあなたたちが思っているほど面白くないですよ」。それも観客の面前で。
それに応えながら、どのように「自分ならではの一刺し」の演技・一言を繰り出すかを忘れないのが、老練・手練れの役者陣。この回も、予想もつかない決め台詞ビシッと決めて暗転、なんていうこともあって、それは、演技を楽しむというよりはむしろやっぱり大喜利の醍醐味。

最後、演出による役者紹介「この役者たちは、一切を捨て、勇気だけをもって舞台に上がってくれました」。違うだろ。勇気だけじゃない。技術と老獪さも一緒に持って上がっていたよ。

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