2015年12月8日火曜日

Lines

28/11/2015 20:00 @The Yard

英国陸軍に入隊した4人の若者の生き様を90分間。前半は訓練期間、後半は実践、名作フルメタルジャケットと同様の構成。
前半のストーリー展開も若干フルメタルジャケットを思わせるものがある。

4人の若者、それぞれにキャラも立って、演技も悪くない。だが、生々しさは実はそれほど感じられない。
それは、彼らが自分のことを語る際に、三人称で語るからかもしれない。
それとも、彼らが軍人として戦争に従事することについて、リアルに感じていないように描かれているからかもしれない。
どうしても、薄膜一枚隔てたところで軍隊にいる4人の存在を感じざるを得なかった。

でも、いかによそよそしく、他人事のように語ろうとも、人間の身体は殴られれば痛いし、鉄砲の弾が当たれば血が出るし、放っておけば死ぬように出来ている。
そのつなぎ目、すなわち、頭の中で考えていた戦闘と、実際の戦闘との境目、継ぎ目は、フルメタルジャケットでは、前半/後半それぞれのラストのシーンで「ぎゃ、痛え!」と思わせる形で出てくるけれども、この芝居では最後まで示されない。
本当は、僕は、その境目/継ぎ目をまたぐ瞬間が観たかった、気がする。

この芝居では、その痛みは薄膜の向こうにとどまっているように思われた。それが、世相が戦争について感じ取る、その感じ方のせいなのか、はたまた作者の意図なのか、それは僕には測りかねる。もしかしたら、軍人さんが大好きなUKならではの芝居なのかもしれない。もしかしたら、自らは安全な場所にいながらにして「敵」を殲滅する、空爆の強化を語るキャメロンのように、痛みは常にどこか向こう側にあるのかもしれない。客席と舞台の間の薄膜を想定すれば、痛みは常に2枚の薄膜の向こう側なのかもしれない。

ちなみに、2015年は、このままいけば、UKの軍隊が過去100年以上を振り返ったときに、国外で戦闘に従事していない最初の年になるんだそうだ。へぇ。
このことをどれだけ身近に感じられるのか、ってことなのかもしれない。
(結局その後シリア空爆に踏み切ったので、記録は達成されなかったのだけれど)

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