30/05/2015 マチネ @Bush Theatre
力のこもった戯曲・演出・役者陣。2時間30分テンションを持続させるも、時として空回り。
1970年から72年にかけて、ロンドンで連続爆弾テロをはたらいたアナーキスト4人組、"Angry Brigade"の顛末を、捜査当局とアナーキスト4人組の双方の視点で描く作品。
うーん、真面目に創ってるのは分かるんだけどなー。どうも、これでもか感が先行して、すっと入ってこない印象。惜しかった。
<ネタバレ注意>
1幕は、Scotland Yardの4人組がターゲットを追い込むさまを描くのだけれど、どうも暗転が多くて落ち着かない。事態の転換のドライブ感を出そうとしているのかもしれないが、ただのブツ切りになっていて、正直、ノれず。これはだめかと思っていたら、
2幕は、アナーキスト4人組のロンドン到着から逮捕までを追っていて、才気ならぬ稚気溢れるアナーキスト達の会話は微笑ましくもあり、昔を思い出してムカッときたり、時として聞かせる台詞もあって最後まで持って行けたのだが、しかし、そこまで。単なる自己満野郎達の暴走とその終焉、みたいに終わってしまった。
所々にオッと思わせる台詞はあって、Angry Brigadeのメンバーが語る「母が掛けているアイロンの蒸気の音の中にこそ、静かで、目に見えない、しかもリアルな、爆弾の爆発=暴力を感じた」っていうくだりはうならされた。こういう台詞が、平田オリザ「革命日記」にあったらばどうなっていただろうか、とも思わせた。
でもね、そういう風に暴力の在り方に切り込みながら、舞台上では「暴力的になっていく」有様をスチールの戸棚をバンバン倒して音で「表現」しちゃったら、それは、駄目でしょう。人種やジェンダーや思想やその他色んなところで「暴力」がどんな風に体現されているのかに迫りたいのであれば、安易な音の効果はただの邪魔。むしろ中村真生の作り笑いや齊藤晴香のワイングラスの方がよっぽど暴力的だったと思う。
そういう生硬さもあって、折角の2部構成(追う側と追われる側)も生かし切れていなかった。本来は追う側の「正義(実は暴力)」と、追われる側の「暴力」「(秩序の中にこそある)暴力」が、コインの表裏である、だからこそ、この芝居は4人の役者が攻守双方に立って演じるのだ、ということなのだろうけれど、そうした意図が伝わらない舞台になってしまっていた。つかさんの「熱海殺人事件」がどれほど巧妙に出来上がっていたか、っていうのと比べてしまう。
いや、それにしても、力作であることは間違いなくて、いや、誰か、構成大胆にいじってぎゅっと締まった舞台にしてくれたら、是非もう一度観たい、とは思っているのだ。
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