24/05/2015 ソワレ @Camden People's Theatre
UKでは日曜日は基本的に劇場が開いていないので、割と限られた中で「これかな?」と見当を付けて出かけてみたのだが、
シンプルでとても良い芝居に当たって、幸せな気分。
Camden People's Theatreは、Camden TownよりはむしろEustonに近いところにある、キャパシティ50人くらいのスタジオ。黒く塗られた壁とか、手作業で組んだ感ありありのバトンとか、まさに「小劇場」と呼ぶのに相応しい、僕にとってはとても居心地の良い空間。
そこで男優2人が約1時間にわたって演じる母と娘の会話。商業的に大ヒットになることはないだろうけれど、是非とも人に勧めたい、色んな人に観て欲しい、とても良い舞台に仕上がっていた。
小さな空間だから、ということもあるのかもしれないが、大げさな身振り、声を張った面切り台詞は無し。同じ台詞から始まる、日常のやりとりに即した、母娘の会話が、同じような構造で4回、変奏曲のように繰り返される(大人版「反復かつ連続」のように)。そういえば、ちょうど日本では快快が「再生」やってるなー、それと比べてどうかなー、どう着地させるのかなー、などと思いながら観ていたのだけれど、どうやらこの芝居の繰り返しは、年月の経過の中での繰り返しであることが、3回目くらいで分かってくる。後で戯曲を読むと、やはり、その辺を説明するト書きがきちんと書いてあるのだけれど、初見で観ている分にはそれは舞台の進行につれて徐々に分かってくるようになっていて、そこに観客の妄想を膨らませる余地が設けられている。
おそらく、この芝居のミソは、「母娘の日常のやりとり」を、キャパ50人のスタジオの、舞台奥(奥って言っても客席最前列からはたかだか2.5m先)の踏み台兼ベンチ以外は素舞台になってる中で、男優2人がTシャツにズボンのシンプルな格好で、カツラかぶるわけでもなく母娘です、と断って演じている点にある。そこで何が起きているのか、物語を組み立てるイニシアティブは、おそらく、相当部分観客が担える余地があるはずなのだ。
そこはどこなのか、いつなのか、本当に母娘なのか、どちらかの妄想の中なのか、男二人の母娘ごっこなのか(あ、それじゃあそのまんまじゃんか)、そういった説明は一切せずに、2人の対話だけで見せていく。俳優の力も感じるし、演出のテンポも感じる。いや、繰り返しになるけれども、戯曲のト書きはもっと説明的で、そのまま具象でやったら凄くつまんなかったんじゃないかと思う。戯曲家自身による演出、すごく上手くいっている。
ちなみに、タイトルのGods are Fallen and All Safety Goneというのは、後から調べたら、スタインベックの「エデンの東」からの引用。親の言ってることが必ずしも全て絶対正しいわけじゃない、ってことに子供が初めて気がついたときの気持ち。親の権威は徐々に失墜するのではなくて、ある日ハードランディングしなきゃならない。その修復にはとっても時間がかかる、ってことらしいのだけれど。
そもそもこの芝居のテーマは、まぁ、母と娘の会話だから、それはそうなんですが、そこを離れて、もっと好きなように観ても全然大丈夫な芝居に仕上がっていた。下手袖に近所の本物の母娘を招いて、何をするでもなく座ってもらってる、っていう趣向も、全く嫌みじゃなく、面白かった。
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