2016年3月9日水曜日

Table Top Shakespeare - Hamlet

05/03/2016 18:00 @Barbican Centre, The Pit

舞台上に役者が一人。テーブルが1つ。テーブルの向こうに役者が座る。役者の両脇、手が届くところにビールケースみたいな箱が逆さに置かれて、そのそれぞれに、調味料の瓶や殺虫剤のボトルやバラの花瓶やペットボトルやアイロンやトイレットペーパーの芯が雑然と置かれている。舞台両袖には高さ1.8m、幅3mくらいの棚があって、そこには、何百もの瓶や缶やペットボトルや何やらが、何となく整然と置かれている。

Forced EntertainmentのTable Top Shakespeare、こんな舞台設定で、シェークスピア(ほぼ)全作品を、各1時間。6日間で上演してしまおうという作品である。
わたしが観に行ったのはHamlet。

ちょっと格好良く書き始めてみようかとも思ったのだが、何のことは無い。瓶や缶やアイロンやトイレットペーパーの芯を役者に見立て、テーブルの上でシェークスピアの芝居を勧めちゃおう、っていう、こう言ってしまうと身も蓋もない企画である。
五反田団をご覧になる方には、「びんぼう君」の劇中、「熱いのぉお」で始まる人形ままごとを思い出して頂いて、それをシェークスピアでやっちゃった、って言うと分かりやすいかもしれない。

相当くだらない。しかし、相当面白い。そして緻密。

芝居=戯曲の進行は「出はけ」から決めていくと平田オリザも言っていたが、それを地で行く演技力。演技力というか、そもそもハムレットはビネガーの瓶なんだから出はけ以外の演技力は無い。そういえば、「余計な演技」も一切無い。くどくどしい長台詞も無い。
全てはメタレベルの演出家(人間の役者)の語りと操作に委ねられて、淡々と。なんだか、ロボット演劇に近い感じもしてくる。
でも、全自動のロボットじゃなくて、全手動の置物だけどね。
それが、役者としての機能を果たしてしまった(そう思わせる状況に持って行ってしまった)ところに、Forced Entertainmentの手練れどもの用意周到な謀略が隠されていて、
そう、これは謀略に違いなくて、そうでなければ、
「机の上に立っているラベル付き調味料の瓶をちょっとだけその場で回転させる」だけで、
「ホレイショが視線を移した」
って思っちゃったことの説明が付かないじゃないか。

ちょっとした言い回し。間の取り方。語り手の役者の視線の変化。そういうもので、シェークスピア、見せられちゃうモンなんですね。
いや、これはすごいもの見せていただきました。

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