2015年8月10日月曜日

Hard To Be A God (邦題 神々のたそがれ)

09/08/2015 @Curzon Bloomsbury

新聞のレビューが異常に良いのでついつい観に行ってしまったが、3時間、観終わって、どぉぉおーーん、という気持ちで映画館を出た。

ブリューゲルの絵に出てくる、遠近法の効いてない妙にニヤニヤした顔の人間達が、
3時間にわたってそのままの表情で人を殺し、吊るし、鼻をつまみ、耳をつまみ、鼻血を出し、つばを吐き、痰を吐き、鼻汁を出し、後ろから股間を掴み、殴り、はたき、虫を握りつぶし、人の顔に止まってる奴は叩きつぶし、泥を掴み、糞を掴み、顔に塗りたくり、音を立てて酒をすすり、それをぶぶーっと人の顔に向けて噴き出し、湿地に近い中世の世界のズブズブの泥の中を歩き続ける。それが3時間延々と続く映画。
地球よりも800年遅れた惑星に、神様(=地球からやって来た、一種オールマイティーの科学者)を放り込んでドキュメンタリータッチで撮影しました、という感じで。

カメラの前に割り込んできたり、突如通行人の汚ねえにいちゃんがカメラ意識してニマーと笑ったり、突如髪の毛が大写しになったり、そもそも映像も遠近を意識させてくれない(都度都度観客としての立ち位置を確認させてくれない)し、物語の構成も余計な説明は一切してくれないし、そんな時間があるのなら3人余計に吊してやる、くらいの勢いである。そういうものを観客に見せる、人前に出すために3時間映画館の空間を埋め尽くす、という意味で、そのイッちゃってる感が、ブリューゲルの、遠近無視、ひたすら画面を埋め尽くすニヤニヤ顔の連中が蠢く絵に近い。

Hard to be a Godって「神様はつらいよ」なんだけど、その意味は、もう、観客一人一人に任せるよ、って感じ。ともかく画面の情報量が異常に多くて、絶対に一回じゃ処理しきれない分量。一方で、そもそも白黒の暗い画面で、ブリューゲルのニヤニヤ顔の見分けはつかないし、唐突の神様会合も何が何やら分からんし、物語の展開に拘らないで観てると必然的に鼻水や唾や血や汚泥に目が行っちゃうし。いや、あんな世界に現代人送り込まれたら、そりゃハードシップ手当相当もらわないと持たないだろうけれど。

これを毎週とか毎日見させられたら気が狂いそうだが、それは、ブリューゲルの絵を24時間まんじりともせず見続けたら気が狂うかな、くらいの意味であって、いや、すごい体験をした、確かにすごい映画だよ、と納得して帰ってきた。

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