2008年12月14日日曜日

竹中直人の匙かげん 三人の女

14/12/2008 マチネ

この芝居、あんまり誉める人いないんじゃないかな、と思った。
「あらあら、一体、なんだったのかしらねー」という感想が多いんじゃないかな。
でも、僕はこの芝居を観て、「岡田利規氏はやっぱり面白い戯曲を書く人なんだな」とも思いました。

幕前、両袖にたかーい壁が建って、暗い照明や舞台中央のパーティな雰囲気のテーブルがマシュー・ボーンの「くるみ割り人形」を思わせる。
開演するとひろーい舞台を少ない役者がいっぱいに使って、長ーい台詞の応酬。例えば
「自分がこれこれと思っているように見えるとあなたが言うのはそれはあなたの主観が入っているからそうなのであって、だから自分が思っていようといまいとそれはそれが事実であることとは無縁な・・・」
って感じなので、開始5分で寝ちゃった人を僕は複数人知っている(僕ではありません)。

そこら辺の饒舌さが、町田康の「宿屋めぐり」「告白」の語りも似る。語り手を変えながら話がどこにも進まず、役者の台詞が、意味のスレッドさえも 振り切りながらブンブンと唸る。それが面白い。出来れば本多でなく、もっと小さい小屋で、役者を小さなスペースに押し込んで観てみたい芝居である。

女優の数が舞台上に増えるにつれて、その「ブンブン唸る感じ」が消えて、役者が「演じよう、何とか意味を見出そう、伝えよう」という努力が前面に出ると、舞台の面白さはフェイドアウトしていった。それが残念。もっと、伝える努力をしなくても良いはずの戯曲なのに。

竹中氏の芝居は、94年の「月光のつつしみ」以来だと思うけれど、相変わらずの神経症芝居が懐かしい。岡田戯曲はデフォルメされたチェーホフな感 じがして、そこも岩松戯曲に通じた感じがしてしまうのは、僕の主観入りすぎか。戯曲良し、雰囲気良し。もっと評判が悪くなるくらいストイックにやればより 僕好み、ということでしょうか。

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