06/08/2008 ソワレ
初日。
一言で言えば、「好みの芝居」。1時間40分3本立て、ついに一度も(文字通り)時計に目をやることなく、時間配分で意識が散ることもなく、お尻が痛くなることももちろんなく、食い入るように観てしまった。
貧乏八畳間の舞台は、杉山至+鴉屋がおそらくとっても得意とする分野で、二方向に開けた部屋の周囲をコワリのスケルトンで囲ったシンプルな舞台の「におい」が、まず良し。
各シーン3人ずつ役者が出てくるのだけれど、その立ち、台詞、「現代大阪弁演劇」とまでは突き放さないまでも、背伸びをせず、自己顕示に走らず、あくまで「場」に拘った演技もまた良し。
3作とも「在日」「被差別集落」に言及した芝居で(2番目はその名も「ムグンファ」となっている)、しかもその登場人物のおおかたが(特に2作目、3作目において)、その、苦痛の思い出が付着している場所を、「戻るべき場所」として認識するのもまた興味深い。声高に叫ばないことで、日本人が「あちら側」と思ってしまいがちなイシューが、越境して普遍に繋がる契機を与えられる。
こういう、奇をてらわず、でも、シーンごとの着想に素直に、「八畳間」という空間に視点をカチッと固定して丁寧に場がつくってある芝居は、上手くいっている箇所もいっていない箇所も含めて、観ていて嫌味がなく、飽きない。もちろん役者陣もそれぞれに力のある人たちで、それに支えられている部分もあるとは言うものの、役者を入れ替え設定を入れ替えてもきちんと統一された「におい」が伝わってくる舞台に仕上がっていた。
普通のきちんとした飲み屋で普通のきちんと作った肴で酒を飲むような。そんな後味の残る芝居でした。
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