2016年10月18日火曜日

No Man's Land

01/10/2016 14:30 @Wyndham's Theatre

ピンターの芝居を最後まで気持ちが離れずに観ていられたのは、多分、初めてだと思う。
そりゃ、イアン・マッケランとパトリック・ステュアートの共演となれば、クソ味噌の出来にはならないだろうという読みはあったし、
正直言って、そこら辺は役者の名前で観に行っているという部分はあったのだけれど。役者4人はそうした下世話な期待を遙かに上回って素晴らしかった。

No Man’s Landという割には、冒頭の年寄り二人のやり取り、若者二人が入ってくるところ、地名がはっきり出てきて、北ロンドンご当地芝居の様相である。Hampstead Heath、Chalk Farm。ああ、あの辺のお屋敷なのね、と思い当たるのだが、そうやって引っ張っておいて、一方で一切外とのコンタクトが示されないところにこの芝居の妙がある。

訪ねてくるべきFinancial Advisorはやって来ないし、外の景色は見えないし、誰も何所へなりと出かける気配もない。名前だけは出てくるけれどもリアルではない。パトリック・ステュアートの記憶も、語られるけれどもリアルに像を結ばない。いきなりそれに反応できてしまうイアン・マッケランが、ただ話を合わせてるだけなのか、本当に記憶を共有しているのか、それも定かではない。建物の中を舞台にした、いい大人の男4人組のお屋敷ごっこのように見えてくる。

筆者はベケットのEndgameを思った。でも、Endgameでも、Clovは窓から外を観ていたはずだ。外の景色はあったはずだ。
Endgameの外が荒涼としていそうで、でも何かがあるのかもしらないという感じと、この芝居の、外には何もかもあるのだと語られているにも拘わらず「本当は何もないのではないか」と思ってしまう感じ。同じコインの表と裏のような気もする。

そういう、どこにも行かない芝居を最後まで見せきってしまう役者陣の力量を堪能した、というのが今回の一番の収穫か。

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