2016年10月19日水曜日

A Gamblers' Guide to Dying

09/10/2016 19:30 @Southwark Playhouse

去年のエディンバラで初演を観た、Gary McNairによる独り語り芝居を、今度はロンドンで。
本作については、筆者の日本語訳、RoMTによる日本ツアーがつい先週終わったところ。これから本家Gamblerの座組はNYツアーと言うことで、誠におめでたいタイミング。日本でのドラマターグを務めた松尾氏とともにSouthwark Playhouseへ向かう。ちなみに松尾氏は、昨年のエディンバラでこの公演を観ていないから、本家の公演を観るのは今回が初めて。

終演後の松尾氏の第一声「日本語版とぜんぜん違う!!」が、多くのことを物語っていたと思う。RoMTの田野氏が「英国本家版と同じように仕上がった!」と豪語していたことを考えると、いやはや、感無量である。その違いについては、後日たっぷり松尾氏に語ってもらうとする。

筆者の感想としては「記憶していたよりも、案外観客に向かって語ってないな」というのが一番大きい。もしも昨年来演出に大きな変化がないのであれば、それは、筆者が「テクスト」を読んでいるうちに、段々と、「演じられていた」バージョンよりも「このテクストを自分がどう読むか」バージョンに解釈が寄っていって、その解釈が観劇の記憶を歪めてしまった、ということなのだろう。おそろしいことである。そしてまた、大いに愉快である。

あるいはまた、客層の違いもあるとも思われた。言ってみれば、エディンバラはこの座組にとってはホームであって、客層も、スコットランドに住む人々が多数派(それも、わりかし高齢のカップルも多かった印象)。言い換えれば、「語るに足る」相手だったわけである。今回はロンドン公演。イングランドの、しかもロンドンの連中に向けてグラスゴーの話をするんだから、そこは若干よそ行きになっても仕方がないかも知れない。実際、筆者が一番違和感を覚えたのは、冒頭の始まり方で、エディンバラではもっと客席を見回して間をたっぷり取って、そこから語り始めた印象が強かったのだが、今回は、舞台奥からさっと入ってきて、さくっと芝居を始めた印象。そう。「語り」ではなくて「芝居」が開演した感じだったのだ。

そう言えば、Hogmanayの恒例番組も、スコットランドローカルのJackie Birdじゃなくて、BBC2のJools Hollandの番組になってたし、Countdownも今風にDo you want to be a millionaireに変わってたし。ラストの台詞にも若干手が加えられていて、語り初めの言葉を用いて芝居の風呂敷を畳みに行くという、一種芝居っぽさ満載の台詞回しで、それも筆者としてはややがっかりではあった。

と、色々ケチをつけたりもするけれど、しかし、それにしても、上質の語りものであることには間違いがないと考えていて、そこは満喫。加えて、日本語版が一度出来上がっちゃったことには変わりなくて、それはそれでまた独自の道で進化していくのだろう。それもまた愉快である。

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