2015年5月18日月曜日

Eclipsed

16/05/2015 ソワレ @Gate Theatre

素晴らしい舞台を観た。
芝居を観ながら「これがどの程度、実際にリベリアで起きたことに基づいているのか」とか「この芝居はハッピーエンドに向かうのか、酷い結末を迎えるのか」とかが関係なくなって、とにかく舞台上で起きていることから目が離せなくなり、この舞台をずっと観ていたい、と思ったのだ。

リベリア内戦時の、反政府軍の頭領の妻、第1号と第2号と第3号と、新しく加わった第4号の話。前振りを聞くなり、かなりキツい話であることは想像できて、劇場ロビーの写真を見ても、やっぱり相当キツそうな予感。「キツい」っていうことは、反面、説教芝居やアジテーション芝居に陥るリスクも相応に高いということで、期待値を上げないようにして、Gate Theatreの客席最前列最上手席に陣取った(こっちに来てまで最前列かい・・・)。

リベリア内戦。反政府軍の頭領の妻たち。彼女たちが住む住居の外の様子は舞台からは窺えない。時折訪れる頭領も、舞台上には登場しない。大きな物語は、戦闘も含めて、舞台の外で起きている。彼女たちが彼女たちが暮らす世界の遙か外、ジャネット・ジャクソンやビル・クリントンやモニカ・ルビンスキがいる世界に想像を逞しくするのと同様、観客も舞台の外の戦闘や少年兵たちについて想像を逞しくするほかない。そして、舞台上で展開されるのは彼女たちの日常だ。日常・・・泣いて笑ってケンカして、嫉妬して、同情して、ウソついて・・・そういう日常のやりとりが、現代リベリア語(とおぼしき英語、ピジンの親戚みたいな)で続いていく。そこに、戦闘員になると言って住まいを飛び出した第2号が帰ってきて、リベリアの婦人のために平和を取り戻す活動家のバリキャリ実業家がやってきて、これまでプライベートな空間だった彼女たちの住居が、セミ・プライベートな色彩を帯びて・・・

って、これ、現代口語演劇の王道を行ってるじゃないか!

日常を描いているのに、リベリアの内戦時の日常そのものがキツすぎて、極めてきっつい芝居に出来上がっているんだけど、それを織り上げるものは日常の所作であり会話であり、「阿修羅のごとく」にも比すことが出来る四姉妹の愛憎であり、文字の読めない1号と2号が4号の読む本を耳で聞いて世界を膨らませていく過程は「ストリートオブクロコダイル」のシーンのように美しく、可笑しく、せつない。2号が飛び出していく食うか食われるかの世界は、まさに資本主義の弱肉強食の裏返しとなって普遍性を帯び(るように小生には思え)、狭い狭いリベリア反政府軍のアジトが、ぐぐっと世界を広げていくのが強く感じられた。
そして何より「どのシーンを観ていても美しく、目が離せなかった」。役者たちの魅力、アンサンブル、勘違いしなさ加減、本当に観ていて飽きなかった。

こういう芝居、日本にいる人にも是非是非観て欲しい。こういう芝居、SPACとかFTとかKAATで呼んでくれないかなー。鳥の劇場で観られたら最高だろうなー、春風舎じゃちょっと狭いなー、そういうことを考えながら、幸せに帰路についた。

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